簡単に掲載できるブログの落とし穴

インターネットでは、画像をコピーして掲載したり、リンクを張ったりすることが簡単にできます。このような行為は、ブログが広まった現在では日常的に行なわれているのが現状です。しかしこれらの行為は、何らかの権利を侵している可能性があります。以下では意外に知られていないブログのマナーを具体例を挙げて解説します。

Q:食事をしたお店や料理の写真、情報(場所や電話番号)をブログに掲載しても大丈夫ですか?

A:そのお店自身が場所や電話番号を、なんらかの媒体で宣伝・公開している場合には問題はありません。もしも、そのお店が、場所や電話番号を一般には知らせない会員制のような方針をとっている場合には、承諾をもらう必要があるでしょう。お店の外観、内装、料理などの写真についても、同じことが言えます。

Q:ディズニー関連のパブリシティ権は厳しいと有名です。ブログにディズニーランドで撮影した写真を掲載しても大丈夫ですか?

A:人物スナップとして中心となる被写体がいて、その背景にディズニーランドの様子が写っているという場合には問題ありません。また「こんなに混んでいた!」といったふうに、ディズニーランドの風景全体を撮影し、ブログに掲載することも、まず問題はないと思われます。問題となる可能性があるのは、ミッキーマウスなどのキャラクターを背景としてではなく、それ自体を中心的な位置づけにおいて撮影し、ブログに掲載(公表)した場合です。この場合、厳密にはパブリシティ権の侵害に当たることになります。

Q:クルマのナンバープレートが写っている場合は消したほうがいいですか?

A:これは肖像権ではなく、プライバシー権の問題となりますが、ナンバープレートの数字全部が鮮明に写っていて、その車両が特定できてしまう場合には、持ち主の許諾を取るか、取れなければ消す、ぼかす、など判別できなくする処理が必要だと思われます。

Q:タレントの写真やキャラクターの画像をインターネットからダウンロードして、商業目的でないブログに使用しても大丈夫ですか?

A:大丈夫ではないんです。タレントの写真には「パブリシティ権」があり、権利者に無断でネット上にアップロードすることはできません。また、キャラクターの画像には、著作権があります。こうした画像をネット上にアップロードすることは、著作権法上、「送信可能化」と呼びますが、これを行なうかどうかを決める権利は、商業目的の有無に関係なく、著作権者にありますので、著作権者に無断でアップロードすることは、商業目的の有無にかかわらず、著作権法上の「送信可能化権」を侵害することになります。一般公開式のブログにアップロードする場合も、これに当たります。個人のブログに逐一チェックが入ることは実際にはあまりないので、つい、大丈夫だと思いがちですが、法律上はこのようなルールになっています。

Q:いい写真の載っているサイトに、リンクを貼ってもいいですか?

A:リンクを貼るという方法は、インターネット上の欠かせない表現方法として定着しました。注意したいことは、リンク先のページの公開レベルを確認し、ネット全体に「公表」する意志のないグループメンバー内の情報を、リンクを通じて不用意に「公表」してしまわないようにすることです。著作権法には、公表権という権利があって、他人の未公表の作品を、意に反して公表することは権利侵害となります。ここに人物スナップ写真が含まれているときには、肖像写真の無断公表ということで、肖像権侵害にもなります。リンク先の情報が、「公表」にあたるレベルで公開されている場合には、公表著作物と見て、リンクを貼ることは法律上問題ないと思われますが、トラブルを防ぐためには、相手に一言「リンクを貼らせてもらっていいか」と許諾を求めたほうがいいですね。逆に、情報が迅速に大勢に広まってほしいという意図から、「転載OKです」といった許諾があらかじめ書かれている情報もあり、こうしたものは、許諾をとらなくてもリンクを貼ることができます。

Q:ブログで掲載した文章や写真を見知らぬ人に中傷された場合、名誉毀損で訴えることはできますか?

A:「中傷」と感じた内容を、一度、整理してみましょう。単なる批判的意見であれば、相手方にも意見表明の自由があります。一般公開レベルのブログに掲載したということは、個人的なサイトではあっても「公表」にあたり、これを読んだ人は、この「公表著作物」を引用したり参照したりしながら、自分の意見を展開する「表現の自由」を持っています。この場合、批判的な意見を書かれたことに傷ついた、がっかりした、という「不快感」は、法律を使って相手方の表現を止めさせる理由にはならないのです。

しかし、この「中傷」の内容が、「あんなことを書いているけど、この人の経歴や私生活はじつは……」というように、プライバシーの暴露になっていた場合にはプライバシー侵害、またそれが本人の社会的信用を傷つけるような内容だった場合には、名誉毀損で訴えることができます。

モデル:新井るみ子、土田裕子

参考文献:
大家重夫「肖像権侵害」竹田稔=堀部政男編『新・裁判実務大系(9)名誉・プライバシー保護関係訴訟法』(2001)
五十嵐清『人格権法概説』(2003)
堀部政男=長谷部恭男編『別冊ジュリスト・メディア判例百選』(2005)
佃克彦 『プライバシー権・肖像権の法律実務』弘文堂(2006)

(筆者プロフィール)
志田陽子(しだ ようこ)
武蔵野美術大学造形学部 教授(法学)。専攻・憲法。武蔵野美術大学では、憲法21条「表現の自由」や著作権法などを中心とした、表現活動に関わる方の問題を扱っている。