地方自治体の「ヘルスツーリズム」にかける思いが熱い一方で、旅行会社のツアーにおける「ヘルスツーリズム」の取り扱いはまだまだ少ない。「ヘルスツーリズム」の先駆けのひとつとして知られているのは、がん検診ツアーや北海道の上士幌町などで実施されているスギ花粉疎開ツアーといったツアー商品だ。
クラブツーリズムでは、この「スギ花粉疎開ツアー」ツアーを今年も実施したほか、がん検診ツアーなども行ってきた。だが、これらの分野は注目されてはいるが、大きなマーケットとは言い難いようだ。花粉疎開ツアーは時期や受け入れ先が限定されており、がん検診は首都圏でも安く実施する病院が増えてきている。
「最初から『ヘルスツーリズム』という切り口でツアーを作るのは、まだ難しいのが現状」と、同社スポーツ旅行センター・グループリーダーの石井芳治さんは語る。
健康に重点を置いた商品として集客数を確実に伸ばしているのは、同社が以前より実施してきた「あるく」というブランド。初心者向けのウォーキングから本格的な山歩きまで、その内容はバラエティに富んでいて、国内のみならず海外のツアーも用意されている。客層は元気な熟年層が中心だ。石井さんによれば、この「あるく」のように目的意識が明確なツアーが、最近は人気を集めているという。
「『ヘルスツーリズム』に関連したプログラムを提案してくる地方自治体は、ここ数年でだいぶ増えています。ツアーの内容はすでに飽和状態にありますので、ご提案いただいたプログラムを行程の中に組み込むことを検討しています」。
旅行会社は、同社のように従来の商品に健康要素を取り入れるのが一般的。「ヘルスツーリズム」を大きなテーマとした旅行ツアーが店頭で見られるのは、まだ先のことなのかもしれない。