心の準備は良いだろうか

会場に足を踏み入れた途端、サブダさんの最新作『ナルニア国物語』の仕掛け絵本の世界に引き込まれる。同物語は壮大なファンタジーであり映画化されたことで有名だが、映画にもない、書籍にもない、新たな表現の1つの方法として仕掛け絵本は確立していることが作品から伝わってくる。「ページの間にファンタジーの世界を創造するのに、(同物語の)のストーリーは適している」とサブダさん。少年が馬で疾走する場面のページでは、仕掛けの動きから手綱を引く力強さや風を感じたほどだ。

ナルニア国物語のはじまり、はじまり。物語の中でナルニア国を作ったとされる偉大なライオンの登場。「ガォー!」と吠えて迫ってくるよう

衣装だんすの奥に雪の降り積もるナルニア国が広がっていた場面から、カロールメン国のシャスタが愛馬とともにナルニア国を目指して旅に出る場面へ

カスピアン王子が暴君ミラース王を倒そうと角笛を吹いた場面から、王となったカスピアンが仲間とともに未知の海へ航海に出る場面へ

続いて、筆者がとても楽しみにしていたサブタさんの代表傑作『不思議の国のアリス』へ。仕掛け絵本のテクニックを効果的に使った表情豊かな場面構成が魅力だ。アリスがトランプの兵隊たちに追い掛けられる見開きの場面だけではなく、サイドの小冊子に組み込まれたウサギ穴に落ちてゆくアリスなど、すべての仕掛けが不思議な物語を描写していて嬉しくなる。

右側の円状の仕掛けでは、ウサギ穴に落ちてゆくアリスまで見える。モニターテレビに映され、一緒に不思議の国の世界に入り込んでいきそうな錯覚を起こす

絵本の最後のページで表現されているトランプの兵隊に追い掛けられてトランプが舞う場面。ページの間から幾重にもトランプが現れる