まず「スタンダード」から始めるピクチャースタイル

キヤノンのカラーモードである「ピクチャースタイル」。標準で用意されているスタイルは「スタンダード」「ポートレート」「風景」「ニュートラル」「忠実設定」「モノクロ」の6種類だ。ほとんどはその名称のとおりの絵になる。「ポートレート」は肌がきれいでくっきりした色合いで、「風景」は青空や緑が鮮やかに再現される。わかりづらいのは「ニュートラル」と「忠実再現」だろう。「ニュートラル」は彩度を抑えて、コントラストも控えめ。対して「忠実設定」は5200Kの環境光下で測色的に被写体とほぼ同じ色になる。

実際にどう使い分けるかだが、ピクチャースタイルはモードによって大幅に色を変える。例えばものすごく鮮やかな服を着ている人を「風景」で撮ったりすると、上から塗ったような違和感のある色になる可能性もある。ちゃんと色のある風景なら「スタンダード」で十分。曇っているとか、グレーっぽい風景の場合のみ「風景」を選択すればいいだろう。「ポートレート」も決して地味なモードではない。子供や女性の顔がアップになるようなシーンに限ったほうがいいだろう。「ニュートラル」は人工のものを撮影する場合など、色が立ちすぎるシーンに有効だが、普通のシーンでは地味に見える。「忠実設定」は特殊なモードとしたい。すると、ほとんどは「スタンダード」で撮影することになるが、やはりここから始めるのが妥当だろう。取扱説明書にもそう書いてある。

ピクチャースタイルのメニュー。これは十字キーではなく、通常のメニューから開く

ピクチャースタイルの詳細設定。シャープネスなど調整できる。これはモノクロ

左から、ピクチャースタイル「スタンダード」「ポートレート」「風景」で撮影。下も撮影設定は同じ
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 45mm(72mm相当) / マニュアル(F11、1/200秒) / ISO 200 / WB:オート

左から、「ニュートラル」「忠実設定」「モノクロ」

左から、ピクチャースタイル「スタンダード」「ポートレート」「風景」で撮影。空の色の違いがよくわかる
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 18mm(29mm相当) / 絞り優先AE(F11、1/400秒) / ISO 200 / WB:オート

左から、「ニュートラル」「忠実設定」「モノクロ」

彩度の高い被写体を撮影し、赤い布の部分のヒストグラムをまとめたのが右の図
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 33mm(53mm相当) / マニュアル(F8、1/60秒) / ISO 100 / WB:マニュアル

各モードによって色や階調の取り方がずいぶん違うのがわかる。スタンダードに対し、ポートレートは補色の階調が広がり、風景では階調を落としつつも彩度を上げている

白飛びを抑える「高輝度側階調優先」

Kiss X2の画像関連の新しい機能「オートライティングオプティマイザー」(ALO)は、被写体が暗い場合などに明るさをコントロールし、例えば逆光などでも顔を明るくする機能。しかし実際にオン/オフで比較したところ、あまり大きな効果は感じられなかった。このALOは標準状態でオンになっている。それもあって効果を抑えているのかもしれない。弊害も特に見つけられなかったので、あえてオフにする必要はないだろう。

もうひとつ、白飛びを抑えてハイライト側の階調表現を向上させる機能として「高輝度側・階調優先」が用意された。これは通常オフになっていて、オンにするとISO 200以上しか設定できなくなる。こちらは明らかに効果が確認できた。低輝度側はほとんど変わらず、高輝度側の5~10%の階調が改善される。例えば明るい空が白くなってしまうようなシーンでも青色が乗るようになる。

この「高輝度側・階調優先」について、取扱説明書には「低輝度側のノイズが増えることがあります」と書かれているが、今回の撮影ではあまり感じなかった。また、場合によってはヌケが悪くなる可能性もあるが、これもそれほど極端ではないようだ。白飛びしそうなシーンではぜひ試してほしい。

難点を言えば、これらが深い階層のカスタム機能に追いやられていること。ダイレクトボタンを用意しろとは言わないが、せめて通常の撮影メニューには入れてほしい。ALOは効果が弱いとはいえ、ソニー「α700」のDレンジオプティマイザーのように高い可能性を持った機能であることは確か。もっと大切にしてほしい。

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ALOの効果をチェックした。左がオン(標準)で右がオフ。しかしその違いはわずかだ
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 55mm(88mm相当) / プログラムAE(F5.6、1/25秒) / ISO 800 / WB:オート / PS:スタンダード

カスタム機能の「高輝度側・階調優先」メニュー。これを「する」にすると高輝度側の階調が広がる。ただしISO 100は使用できず、ISO 200以上となる

下の噴水の画像のヒストグラムを比較。「しない」では高輝度側(右側)が白飛びしているが、「する」を選ぶとずいぶん階調が確保できるのがわかる

左が高輝度側階調優先「しない」、右が「する」。撮影条件は同じ
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 41mm(66mm相当) / マニュアル(F5、1/1000秒) / ISO 200 / WB:オート / PS:スタンダード

左が高輝度側階調優先「しない」、右が「する」。右のほうが空の色が出ている
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 18mm(29mm相当) / 絞り優先AE(F3.5、1/250秒) / ISO 200 / WB:オート / PS:スタンダード

マクベスのチャートを露出を変えて撮影した
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 39mm(62mm相当) / マニュアル(F5.6) / ISO 100 / WB:マニュアル / PS:スタンダード

「オートライティングオプティマイザー」(ALO)のメニュー。暗部を明るくする機能は、明度の値が大幅に変化する可能性があるため、このテストでもオン/オフの両方でチェックしている

撮影したマクベスチャートから各色の明度を読み取ってグラフ化したもの。非常に無理のない、自然なカーブになった。ALOのオン/オフでの違いも少ない。シアンとマゼンタのカーブの取り方が微妙に異なっている

自然でいて印象的な絵づくり

さて、Kiss X2の絵づくり全体についてだが、ものすごく良くなった。単に派手/地味という問題ではなく、絵が堂々としている。あまりいい言い方ではないが、あざとさを感じなくなったというところだろうか。

従来のKissは初心者を想定してか、無理に色を乗せたり、過度にシャープネスをかける傾向が感じられた。分かりやすいといえばわかりやすいのだが、"初心者なのだからこれでいいでしょう"という見切りがついて回ったように思う。しかしKiss X2の画像は違う。自然でいてなおかつ印象的に描写する。コンパクトからのステップアップユーザーでも明らかにきれいだとわかり、プロが見ても不満のない絵づくりだと思う。

また従来のKissだけでなくEOS 40Dもそうなのだが、フレームに空などの明るい被写体を広く入れると極端に露出が下がる傾向があった。これもKiss X2では影を潜め、明るいものは普通に明るく描写する。とてもいい。

そんなわけでKiss X2の絵づくりにはたいそう驚いている。まだオリンパスの「E-420」は見ていないが、この春登場した10万円以下の一眼レフの中で、もっとも気に入っている。

ホワイトバランスの詳細設定。これもモニター脇の[WB]ボタンからは設定できず、通常メニューから行なう。オートホワイトバランスでも調整は可能

ホワイトバランスの変化をチェックした
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS / Large+Fine(JPEG) / 41mm(66mm相当) / プログラムAE(F8、1/125秒) / ISO 200 / PS:スタンダード