ちょっとオトナな感触
Kiss X2のボディは非常にコンパクトだ。手にしても軽い。Kiss Xの510gからKiss X2の475gへとわずかに軽くなったが、それ以上に身が締まった感じがする。その代わりというわけではないが、レンズがやたら太く見える。
グリップは細めで、ボディそのものも薄いようだ。そのため大人の手だと指先でグリップを引っかけるような感じになり、少々指が余る。ただ、スタッフの小柄な女性の手にはちょうどよかった。Kissとしてはこれが正解なのだろう。また、グリップや親指の当たる部分には必要十分なゴム材が貼られていて、指が滑らないようにしている。これはとてもいい。従来のKissより高級感もある。
シャッターボタンは左右のぶれが大きめ。押しづらいわけではないが、もっと正しく上下してほしい。シャッターボタンは重めで、ちょっと力がいる。指を立てて押す感じだ。そのほかの各ボタンのタッチはあっさりしている。オンがものすごくわかりやすい。少々安っぽいが、操作しやすい。
そのボタンの配置だが、巨大な(そう見える)3型モニターのしわ寄せか、配置に苦しんだ様子が見える。ISO感度設定ボタンはシャッターボタンとモードダイヤルの間にあるが、"どうしてこんなところにあるのだろう?"と思う。例えば、現在の測光性能はとても良くなっているため、測光モードはほとんど切り替えずに済むようになった。だったらこれをメニューに入れて、空いた場所にISO感度設定を割り当てるなど、もっと整理できるのではないか。それでも、ボタンによって形状やサイズなどを変えるといった工夫がされているのは大したものだと思う。隅々まで気を配っているのがわかる。
レリーズの音はシュリーンという甲高い音だが、イヤな音ではない。ミラーショックが軽めなこともあって、軽快にシャッターボタンを押していける。オートフォーカスはとても快適で、リズムに乗った撮影できる。ただ、内蔵ストロボのポップアップはショックが大きい。全自動などの「かんたん撮影ゾーン」では明るさに応じて自動でポップアップするが、意識していないとけっこう驚くはずだ。
最後に使った機能を覚えてくれるメニュー
大型の液晶モニターには、常に撮影情報が表示される。ファインダー接眼部の下にセンサーを装備し、顔を近づけただけで情報表示が消灯される。シャッターボタンに触れなくても消えてくれるのはありがたい。
情報表示画面は、Kiss Xでは白地に黒文字というデザインだったが、Kiss X2ではそのほかに黒地+白文字、紺地+シアン字、ベージュ地+エンジ字という、計4パターンから選べるようになった。これはとてもいいと思う。見やすさではやはり黒地+白文字だろう。場所によっては紺地+シアン字も悪くない。ベージュ地+エンジ字はちょっと高級感がある。
液晶モニターだが、室内などではとても見やすい。文字が大きく、クリアな表示で画像の確認やメニュー操作が可能となる。ただ、明るい屋外に出ると反射が多く、あまり見やすいとは思えなかった。直射日光はもちろんだが、日陰でも回りの光を反射してハレぎみになる。表面のコーティングやコントラストなど、もうひと工夫してほしいところ。
各機能の操作はメニューにまとめられているが、使用頻度の高いものは専用ボタンや十字キーに割り振られている。基本的に機能は重ならず、メニューかボタンのどちらかに置かれている。例えば測光やオートフォーカス関連は専用ボタンだけで、メニューからは操作できない。例外はカラーモードを選択する「ピクチャールタイル」と「ホワイトバランス」だ。切り替えは専用ボタンなのだが、詳細設定はメニューから行なう。これはとても不思議。わざわざ専用ボタンを持っているのだから、詳細設定もそこから行なったほうがわかりやすいと思う。
各種の設定は、最後に[OK]ボタンを押して決定するのが基本。それはいいのだが、AFポイント(AFフレーム)の選択だけは違っていて、最後に[OK]を押すと中央の位置に戻ってしまう。理屈ではわかっていても、アレコレ設定を変えながら撮影していると、なかなか体が反応してくれない。何度もAFポイントを選び直すことになった。また、AFポイントの選択は、右上の[AFフレーム選択]ボタンを押してから十字キーという流れになるのだが、両方とも親指で操作しなければならず、指の移動がちょっと大きい。
メニューは横方向で「撮影」「再生」などのグループを選び、上下方向で各機能を選択する方式。上下方向のスクロールはせず、機能が一覧できるのがいい。また、最後に使った機能をきっちり覚えている。メニューを開いたときはもちろん、グループを移動しても各グループで最後に使った機能が選択される。これはとても使いやすい。
また、撮影直後の画像確認中にボタンを押しても、ちゃんと撮影モードで動作する。[イージーダイレクト]ボタンを押しても、印刷設定ではなくホワイトバランスのメニューが開く。撮影と再生で異なる機能を割りつけられているボタンが少ないということもあるが。
気になったのは、撮影直後の画像確認時には、画像の拡大ができないこと。[DISP]ボタンで表示方法の切り替えはできるのだが、拡大はできない。拡大するにはいったん再生モードに切り替えなければならず、これは最後まで戸惑った。また、どこのAFポイントを使って撮影しても、拡大は常に中央を拡大する。拡大そのものはスムーズで使いやすいのだが…。
標準ではオフになっているライブビュー
さて、ライブビューである。Kiss X2ではオートフォーカスに通常撮影と同じ位相差式(クイックモード)と、撮像素子に写った像によるコントラスト検出式(ライブモード)の両方が使える(どちらか選択)。ちょっと期待していたのだが、ライブビューに切り替えたらオートフォースが動かない。よく見たら、標準ではライブビューでのオートフォーカスがオフになっているではないか。再度チェックすると、ライブビューそのものが初期状態ではオフになっている。使用を推奨していないのだろうか?
撮影してみよう。位相差式を選ぶと、フォーカスフレームが2つ現れた。小さな四角と大きな四角。アタマの中は「?」マークで一杯になった。どうやら小さなほうが実際のAFポイント(9点)で、大きな四角は拡大表示の目印のようだ。AFポイントはライブビューに切り替える前に設定しておく必要があり(ライブビュー中は移動できない)、拡大目印のほうは自由に移動できるから、ピントを合わせた部分とまったく別の場所が拡大表示されることになる。これは使いやすいとか使いづらいとかいう以前の問題だろう。
今度はコントラスト検出式。こちらは四角い枠(AFフレーム)はひとつだけで、ライブビュー中でもちゃんと移動できる。ピント合わせにはとても時間がかかるが、風景や花などをじっくり撮ることを考えれば、それほど欠点にはならないはず。拡大は5倍、10倍が可能で、微妙なピントも確認できる。Kiss X2でライブビューを使うなら、このコントラスト検出式のほうだろう。
ピント合わせは[*]ボタン、レリーズはシャッターボタンと完全に分けていることもあって、ライブビューでも繁雑な感じはしない。レリーズ時のミラー跳ね上げは、どちらのモードでも1回で終了する。ライブビューで撮影したあとは確認用の画像を表示し、ちゃんとライブビューに戻ってくる。このあたりの使い勝手は悪くないない。
ただ、まだ煮詰めてほしい部分も少なくない。まずライブビューではホワイトバランスと露出を除き、ほとんどが設定できなくなる。というか、ボタンが反応しなくなる。ピクチャースタイルも変更できない。[MENU]ボタンでメニューを開くと、ライブビューそのものが解除される。ホワイトバランスはライブビューでも変更できるが、選択だけでは色が変わらず、決定してから反映される。これではライブビューのメリットが半減するのではないか。
また、メニューの「機能設定2」に「ライブビュー機能設定」があり、ここにライブビューの使用やグリッド表示などがまとめられている。しかし先程のオートフォーカス方式の切り替えはなぜか「カスタム機能」に追いやられている。「ライブビュー機能設定」のメニュースペースは空いているのだから、こちらに入れるべきだと思う。ライブビューに限らず、けっこう使用頻度が高いものが「カスタム機能」に入っている。メニューや専用ボタンにどの機能を割り振るか、一度整理したほうがいいのではないだろうか。
Kiss X2でのライブビューは、モニターが大きく見やすい。ただし事前に「ライブビュー撮影」を「する」にしておくなど、設定が必要 |
ライブビューでの作例。花壇の中にカメラを置いて撮影した |
「機能設定2」メニューの「ライブビュー撮影」を「する」に変更するとライブビューが使えるようになる |
オートフォーカスもオフになっているので、カスタム機能「C.Fn-8」の「ライブビュー撮影中のAF」で選択する |
ライブビューの表示画面。標準ではとてもシンプル。グリッドも表示されない |
[DISP]ボタンを押すと撮影情報が切り替わる。ヒストグラムも表示可能 |
ライブビュー中は、5倍、10倍の表示拡大が可能。ピントも分かりやすいのだが… |
コントラスト検出式AFでピントが合うと、枠が緑になって表示される |
よくできたマニュアルと付属ソフト
初心者向きとカメラということで、取扱説明書にも少し触れておく。Kiss X2に限らないが、キヤノンの取扱説明書は実によくできている。「○○したいときは?」といった目的別ページと、メニュー順に解説するページがうまくバランスしている。なにより、それぞれ設定した結果どうなるか、どうすべきかがちゃんと書かれている。情報量も多い。
難点は文字が小さいことだろう。携帯性を考えて版形を小さくしているため仕方がないともいえるが、年配の方など目の弱い人にはちょっと読みづらいだろう。そこでお薦めなのは、PDFのマニュアルだ。これをダウンロードし、拡大プリントすれば見やすい取扱説明書ができあがる。出先にはオリジナルを持って行けばいい。
もひとつ付属ソフトについて。全部試したわけではないが、少なくとも「Digital Photo Professional」は使いやすい。基本はRAW展開ソフトだが、画像ビューアとしてもそこそこ使える。ちょっと表示に時間がかかるが、ソフトそのものは軽く、軽快に使用できる。難点は、ソフトからファイル名の変更ができないことぐらい。RAWは使わなくても、これはインストールしておいて損はないだろう。