繊細さが必要なボタンやダイヤル類
K20Dを持つとしっかりした重さが伝わってくる。キヤノン・ニコンのプロ機のようなずしりとした重さではなく、適度なサイズに中身が詰まっていることを感じさせる重さだ。グリップなど、手が振れる部分はしっかりしたゴム質で被われ、質感は高い。ボディ表面もシボが施され、ダイヤル類も含め、ちょっとした高級感がある。K200Dと比べてもその差は歴然としている。メディアやバッテリーの出し入れには、脱着用のレバーを遣わなければならない。操作的には若干面倒だが、これは防塵防滴ボディを扱う上での儀式でもある。
シャッターは半押しまでが非常に軽く、その後がぐっと重い。というか、プチッという感じでレリーズする。明らかに押すという意思が必要で、誤シャッターは少ないはずだ。シャッター音にはギヤの噛み合わせのような"ジャカ"という音が混じる。これが最初は耳についたが、使っているうちにいかにもレリーズしている気分になって、悪くないと思うようになった。オートフォーカスの動作音は甲高い。また、モーターが強力なせいか、トルク反動を感じるほどだ(DA 16-45mm)。
ボタン類は小柄だがオンにした状態がわかりやすく、使いにくくはない。十字キーはクリック感があってタッチはいいが、そのまわりに測距点切替ダイヤルが置かれているため、狭いところを押し込む感じになる。この測距点切替ダイヤルはキヤノンのダイヤルのようにぐるぐる回して何かするわけではなく、測距点の3つのモードを切り替えるだけ。だったらここに置かなくてもいいのではないか? 総じて、ボタンやダイヤルの操作には、繊細さが必要だ。
当たり前のことを当たり前にこなすメニュー
メニューは、[MENU]ボタンの他に、頻繁に使う機能を集めた[Fn]ボタンで開くメニューが用意される。カラーモードを選択・設定する「カスタムイメージ(CUSTOM IMAGE)」、連写・セルフタイマーなどを切り替える「ドライブモード」、ホワイトバランス、撮像感度(ISO)、ストロボモードが[Fn]メニューに含まれる。
それ以外の機能は通常の[MENU]ボタンから開くメニューに含まれる。[Fn]メニューと内容はダブっていない。どちらかに整理されている。通常メニューは、上段横方向に「撮影」「再生」などのグループが並び、下に各項目(機能)が並ぶという一般的な構成。各グループの項目は1画面には収まらず、スクロールさせて表示する。好感がもてるのは、できるだけ階層を浅くしようという努力が見られること。単に2~5種類から選ぶだけなら、別メニューには移動せず、右端に現れる選択肢を選ぶだけで終了する。全体を見ながら設定できるので安心できる。ただ、「C カスタム」だけは違っていて、オン/オフを切り替えるだけでも別メニューに切り替わる。どうせなら同じ方式にしてほしい。
撮影状態で[INFO]ボタンを押すと、撮影情報が一覧で表示される。(アイコン)を多用するペンタックス方式だが、慣れればひと目でわかる。例えば「S.ファイン」と文字で書くより「★★★」と星の数で見せたほうがわかりやすいだろう。この情報表示画面、できればいつも表示しておくようにできるといいのだが。
再生時の「クイック拡大」はとても便利。基本は後電子ダイヤルを回すと順に拡大される方式で、これはこれで使いやすいのだが、「再生」メニューの「撮影時の表示方法」で「クイック拡大」を指定しておくと、ダイヤルの最初の1クリック(回転)で8倍、16倍などにいきなり拡大できるのだ。ピントの確認などもとても素早く行なえる。指定できる倍率は、「×2」「×4」「×8」「×16」「×32」。
撮影直後に画像を表示する「クイックビュー」時は、[INFO]ボタンを押しても画像表示方法が切り替わらない。しかしクイック拡大を含め、拡大表示は可能。撮影中と割り切っているのだろう。クイックビュー時に[Fn]ボタンなどを押すと、ちゃんと撮影時のメニューが現れる。当たり前のことだが、これができないカメラがあまりに多いのだ。K20Dはちゃんと考えている。
ライブビューは「プレビュー」のひとつ
電源レバーを[ON]からさらに右へ回すと「プレビュー」に切り替わる。プレビューには3種類あり、「ライブビュー」「光学プレビュー」「デジタルプレビュー」のうちからどれを使うか事前に設定しておく。「光学プレビュー」というのは、絞りを絞り込んだ状態にして、被写界深度などを光学ファインダーで確認する機能。スタジオ撮影などでは頻繁に使われているものだ。それと同じ操作で「ライブビュー」が用意されているのがおもしろい。ライブビューもプレビューのひとつというわけで、ペンタックスの考え方の一端が伺える。ちなみに「デジタルプレビュー」は仮撮影で、どんな画像か撮影前に表示する機能。しかしデジタルなのだからワンカット試し撮りすればいいわけで、これを使うことは少ないだろう。
ライブビューだが、まだ付加機能的な域を脱していないように感じた。通常撮影と同じフォーカスユニットを使用するため、ピントを合わせる(AFボタン)たびにミラーを跳ね上げるのは仕方がないとしても、ライブビュー中は露出補正もできないというのはつらい(他に、シャッター速度、絞り、ISO感度の変更も不可)。また、ライブビュー中に[Fn]などのメニューを開くと、ライブビューに戻ってこないのも使いにくい。
このライブビューが活躍するのは、三脚を使ってマニュアルフォーカスでピントを合わせるようなシーンだろう。1カットづつ丁寧に撮るシーンなら多少の使い勝手の悪さは無視できる。ライブビュー像にはAFフレームやグリッド(格子)も表示できるし、ピント確認のための拡大表示も可能だ。じっくりと絵づくりするのにK20Dのライブビューは向いている。
使い込んでいくと良さのわかるK20D
ハイパー操作系をはじめ、ペンタックスは露出の取り方に素晴らしくこだわってる。撮像感度を露出のひとつの選択肢として考える操作系も他に類を見ないものだ。「感度優先」は撮像感度を指定し、シャッター速度と絞りはカメラが最適値を設定するもの。他のカメラの感度指定+プログラムAEと変わらないが、撮影中にダイヤルを回すだけで感度がスッと変わっていくのは独特の感覚だ。プログラムAEよりも、こちらのほうが感覚的に使いやすく感じた。
「シャッター&絞り優先」は絞りとシャッター速度を関連させずに指定できる、K10D/K20Dの真骨頂ともいえるもの。ボケや被写体ブレだけに集中して撮影できる。ただ、このためには高感度時の低ノイズが必須条件になる。ノイズについては後で詳しく報告するが、もっとノイズを減らしてほしい。
"他のカメラでもできるが専用の操作系を与えて使い勝手を良くしたもの"の典型は、[RAW]ボタンの存在だろう。前面のレンズ脇に位置し、JPEGで撮影中、これを押すと1カットのみRAWで撮影できる(他の機能もある)。撮影していて"これはRAWで撮っておきたい"というときにとても便利な機能だ。
これらを含め、K20Dは非常にカスタマイズの幅の広いカメラだ。ダイヤルなどの設定をはじめ、画像設定なども細かくセッテングできる。もちろん設定の登録もできる。使い込んでいくと、K20Dユーザーであっても他の人のK20Dは使いづらく感じるかもしれない。それはそれでいいと思う。反対に、初期設定は甘く感じる。例えば露出ステップが初期設定では1/2段ステップになっているが、露出にシビアなデジタルでは1/3段ステップが順当だろう。むしろ1/4段ステップがあってもいい。
独自の操作やカスタマイズ性を含め、操作や撮影手法に考え方を強く打ち出したカメラといえるだろう。しかも、それがとても理にかなっている。K20Dは理想主義なカメラだと思う。