クリエイティブスタイルの差は大きくない

カラーモードである「クリエイティブスタイル」には、8種類が登録されている。標準的な「スタンダード」、鮮やかになる「ビビッド」、人物撮影向きの「ポートレート」、遠くの風景もクリアに撮影する「風景」、見た目に近い夜のシーンを再現する「夜景」、全体に赤くなる「夕景」、そしてモノクロ写真になる「B/W」と、色空間が変わる「Adobe」だ。

クリエイティブスタイルのカラー6種を比較してみると、明らかに色が異なる「夕景」を除き、色の傾向については大きな違いはない。部分ヒストグラムを見ても、その差が少ないことがわかる。むしろ目につく違いはコントラストだろう。「スタンダード」に比べて「ビビッド」と「風景」はコントラストが高く、「夜景」はコントラストが低くなる。「ポートレート」はほぼ同じくらいだ。

使い分けだが、マニュアルに書かれた目的どおりに切り換えるのが無難だろう。風景なら「風景」、夜景なら「夜景」といった具合。というものの、絵の傾向はあまり変わらないので、「スタンダード」のままでもほとんどは大丈夫のはずだ。ただ、「夕景」だけは他とまったく違うので、使用シーンを選んで使いたい。

カラーモードを変更する「クリエイティブスタイル」は、コントラスト、彩度、シャープネスを個別に設定できる

クリエイティブスタイル:スタンダードで撮影。以下、設定は同じ
DT 18-200mm F3.5-6.3 / L+Fine(JPEG) / 50mm(75mm相当) / 絞り優先AE(F5、1/640秒) / ISO 100 / WB:オート

クリエイティブスタイル:ビビッド

クリエイティブスタイル:ポートレート

クリエイティブスタイル:風景

クリエイティブスタイル:夜景

クリエイティブスタイル:夕景

クリエイティブスタイル:B/W

クリエイティブスタイル:スタンダードで撮影。以下、設定は同じ
DT 18-70mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 70mm(105mm相当) / プログラムAE、補正+0.3EV(F6.3、1/125秒) / ISO 100 / WB:オート

クリエイティブスタイル:ビビッド

クリエイティブスタイル:ポートレート

クリエイティブスタイル:風景

クリエイティブスタイル:夜景

クリエイティブスタイル:夕景

モノクロ写真になる「B/W」では彩度の調整はできないが、コントラストやシャープネスは変更可能。セピアなどのカラー機能は用意されていない

「B/W」での撮影例
DT 18-200mm F3.5-6.3 / L+Fine(JPEG) / 18mm(27mm相当) / 絞り優先AE(F22、1/40秒) / ISO 100 / WB:オート / CS:B/W

たき火を撮影。火が赤いために、全体に青みが強く、なんとなく寒々しい色になる
DT 18-200mm F3.5-6.3 / L+Fine(JPEG) / 100mm(150mm相当) / 絞り優先AE(F11、1/30秒) / ISO 100 / WB:オート / CS:スタンダード

クリエイティブスタイルを「夕景」にして撮影。暖かい雰囲気の写真になった
DT 18-200mm F3.5-6.3 / L+Fine(JPEG) / 120mm(180mm相当) / 絞り優先AE(F11、1/20秒) / ISO 100 / WB:オート / CS:夕景

明るさをコントロールするDレンジオプティマイザー

α700で壮絶な影響力を見せた「Dレンジオプティマイザー」だが、α350での同機能はそれほどでもない。ユーザーが指定できる「アドバンス レベル設定」が省かれているというだけでなく、強く効果があるはずの「アドバンス」(オート)に合わせても、少し暗部が明るくなる程度で、劇的な変化は現れなかった。少々寂しい。

部分補正を行なう「アドバンス」は撮影後に処理時間が掛かるので、続けざまに撮るような場合には向かない。やはり通常は標準設定の「スタンダード」にしておき、逆光がきついとか、暗部をできるだけ持ち上げたいという場合のみ「アドバンス」を選択するのがいいだろう。

ホワイトバランスはオートのままでこれといっておかしなところは見られなかった。ただ、オートには微調整機構がないのが残念。他のモードでは赤←→青の調整が可能だ。オートでもできるなら、常に好みの傾向になるよう設定できるのだが。

Dレンジオプティマイザーは、明るい側の階調もコントロールするというが、見た目では暗部を明るくする機能が主のように思える。「スタンダード」はガンマカーブ(トーンカーブ)による全体の調整だが、「アドバンス」では部分ごとの補正まで行なう

逆光状態でDレンジオプティマイザーを変更して撮り比べてみた。これは「オフ」の状態。以下、設定は同じ
DT 18-200mm F3.5-6.3 / L+Fine(JPEG) / 24mm(36mm相当) / 絞り優先AE(F4、1/250秒) / ISO 100 / WB:オート / CS:スタンダード

Dレンジオプティマイザー:スタンダード

Dレンジオプティマイザー:アドバンス

ホワイトバランスの比較
DT 18-200mm F3.5-6.3 / L+Fine(JPEG) / 50mm(75mm相当) / 絞り優先AE(F11、1/100秒) / ISO 100 / CS:スタンダード

リアリティの高い絵を狙う

さて、全体の絵づくりについてだが、一言でいうと、α100の絵づくりに戻ったように感じた。日陰で彩度が立ち上がってしまうことや、暗部がドロッとする感じなど、いつか見た絵のように思う。また、ピントが合っているのに緩く、1枚薄皮をかぶせたような画像になってしまうこともあった。これは先に述べたレンズのせいなのか、「アドバンス」(Dレンジオプティマイザー)のためなのか、判断はできなかった。

明るさを変えて明度を測定した「ダイナミックレンジ」のテストでも、α350はα100のカーブと非常に近いものになった(α100は過去にテストしたもの)。EV±0、EV+1あたりでシアンとマゼンタの関係が違っているが、全体的にはよく似ているとしていいだろう。少なくとも、α700の同グラフとはぜんぜん違う。

α100に似ているからというわけではないが、非常に色乗りのいい独特の画像になる。リアリティの高さも健在だ。少々手ごわいかもしれないが、うまく手なずければ他では得られない写真が撮影できるはずだ。

明るさを変えてマクベスチャートを撮影し、明度の変化をグラフにしたのが以下のグラフ。設定はすべて同じ。α100は以前撮影したもの
DT 18-70mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 50mm(75mm相当) / マニュアル(F5.6) / ISO 100 / WB:マニュアル / CS:スタンダード

α350 Dレンジオプティマイザー:オフ

α350 Dレンジオプティマイザー:スタンダード

α350 Dレンジオプティマイザー:アドバンス

α100 Dレンジオプティマイザー:オフ

彩度の高い被写体をクリエイティブスタイルごとに撮影し、赤い布の部分のヒストグラムをまとめたのが次の図。撮影設定は同じ
DT 18-70mm F3.5-5.6 / L+Fine(JPEG) / 45mm(67mm相当) / マニュアル(F8、1/60秒) / ISO 100 / WB:マニュアル

これを見る限り、各モードでの変化は少ないといえる。いずれも赤を張りつかせ、補色で階調を得ている。ビビッドで青と緑のバンランスが逆になっているのが興味深い

日陰の千羽鶴を撮影。青などの色が浮き上がってしまった
100mm F2.8 Macro / L+Fine(JPEG) / 100mm(150mm相当) / 絞り優先AE(F11、1/100秒) / ISO 800 / WB:オート / CS:スタンダード

空の青色はいいのだが、なんだか薄皮をかぶったような、抜けの悪い画像になった
DT 18-200mm F3.6-6.3 / L+Fine(JPEG) / 200mm(300mm相当) / 絞り優先AE(F6.3、1/1000秒) / ISO 100 / WB:オート / CS:スタンダード