アーキテクチャ研究編では、概ね「実はPhenomは優秀だ」という話になった訳だが、このあたりから「でもやっぱり……」という話になってゆく。その急先鋒となるのは、消費電力である。論より証拠で、まずは数字を見てみたい。

消費電力

グラフ1

グラフ1は、一定の負荷を掛けた場合の、システム全体の実効消費電力をまとめたものである。細かな構成は後述するが、基本的にはCPUとM/B(とCPU)以外、全て同じ構成になっている。ちなみにPhenomであるが、BIOS Setupにコア数を制限するオプションがある(Photo01)。これを使い、4コアを全て使った場合(Phenom 4P)から1コアのみ稼動させた場合(Phenom 1P)までも同時に測定してみた。

Photo01:Disableはコア数の制限なし(つまり4P)、1は1コア制限あり(つまり3P)という事になる。ちなみにこの機能はPhenomでのみ利用でき、Athlon 64 X2では利用不可能だった。

通常だとここでSandraを使うのだが、今回はPCMark05をメインとしている。理由は簡単で、3P状態だとSandra VIIが正常に起動しなかったからだ。どうも3Pという構成は想定していなかったらしい。結果を見ると、やはりPhenomの消費電力の高さが突出している。Core 2 Quadと比較した場合、概ねPhenomの3Pで同等程度であり、4P状態では平均20W程度高めの消費電力となっている。勿論Phenomの4PとAthlon 64 X2とは比較しようもないのだが、2P状態でもAthlon 64 X2をかなり上回っている事が見て取れる。

ちなみにこのテスト、どちらかといえばAthlon 64 X2/Phenomに甘めである。マザーボードが異なるから厳密な意味では一致しないが、オンボードデバイスの数は概ね同等。チップセットは高発熱のIntel X38 vs 低発熱のAMD 790FXだから、チップセットのお陰でPhenom系はこの程度の消費電力で済んだ、という見方もできる。このグラフのうち、Phenomについてのみちょっと書き換えてみたのがグラフ2である。

グラフ2

横軸をコア数、縦軸を消費電力という形でプロットしてみたものだが、待機とPCMark05のCPU Multi-Thread Test #2でが非常に良い指標になっているようだ。3DMark06はGPUの消費電力が跳ね上がる関係でグラフのY軸切片が跳ね上がっているし、その他のテストは中途半端なCPU負荷のためか、コア数と消費電力の関係がまちまちになっている。とりあえず以下は待機電力とPCMark05のCPU Multi-Thread Test #1の値を使って分析を進めることにしたい。