--休養から現在に至るまで、どんなことを考えていましたか?

何でも正直に話す末續選手は、練習に臨む際も自分の感覚を大事にしているという

次にやらなきゃいけないことを考えていました。いままでやってきて、僕の走りが通用した年もあったけど、そうじゃない年もあった。世界陸上も団体競技のリレーの方は良かったんですが、個人としては敵わなかったというのが現実です。個人ではやはり"失敗"なので、それを自分の中で認めて、次のことをやるという感じです。

--世界陸上の200メートルでは二次予選で終わってしまいました。それはいままで成功していたことが再現できなかったということなんですか ?


前の成功は、その時の自分が成功したわけであって、今の自分ではないということですよね。だったら、現在進行形の自分をちゃんと見つめ直して。怖いですよ、現状を知るというのは。

--怖いというのは、自分の実力がハッキリしちゃうからですか?

そうですね。まあ、ハッキリしたのはよかったんですけど。身体の調子というのは、浮き沈みありますけど、「頭」と「精神」は、毎年毎年成長していっている。そこに身体をどうやってついていかせるか、だけなんで特に焦りはないですね。

--ナンバ走法など、常に新たなことにチャレンジするのが末續選手の特徴だと思いますが、いまはどんなチャレンジをしているのですか ?

"ナンバ走法"というのは、日本人の体型を活かした動き方なんですよ。でも、ただの"動き方"なので、もっと引いて見たとき、日本人の体型でいちばん合っている方法(トレーニング)があると思うんです。だから、日本人に合った鍛え方だったり、僕に合った鍛え方は何か? というところから入っていきたいと思っています。そうしていざ蓋を開けてみたときに、生まれるものに期待したいですね。何かしたいということは現状でもあるんですが、それが何なのかはまだ想像もつかないです。

--「何か」は2008年の北京オリンピックにわかるわけですね。北京までわからないというのは、不安ではないんですか?

究極に不安ですよね。でもそれが成功すれば、究極の自信になりますから。実は僕、不安屋なんです。だから練習するし、いつもそれじゃ足りないと思ってる。でもそれなりの結果が出たり、「これだ!」というのがあれば、周りが"ナンバ"の時のように名前を付けるでしょうね。でも、まだはっきりわかんなくていいこと。あくまで、生まれてくる「何か」に期待したいんです。

--ずばり、次の大会は、100メートルと200メートルと、どちらで出場するおつもりなんですか?

言葉は悪いんですけどノリで(笑)。やっぱりね、僕も開けてみないとわからないんで。ひょっとしたら100、200メートル両方やるかもしれないし、決めちゃうとそっちに向かっていかないといけないから可能性を決めたくないんですね。決めてしまうといろんな感性や野性が削られるので、そういうのをあえて無視したいんです。試合が始まったら必然的にやらなきゃいけなくなるんで、どうなるかなって自分でも楽しみなんですよ。

--中国で劉翔選手がものすごい記録を出していると思うのですが、同じアジア人としてどういう気持ちでご覧になっていましたか?

いやいや、彼にできるんだったらできるでしょう、同じアジア人ですから! 正直、悔しいっすよ。悔しいというか、ちょっと想像できない世界に行っちゃったんで「これは……」と思ったんですけど、そう思ってしまった自分もちょっとダメだなと思って。いまはライバル視するくらいガチンコでいきたいなと思っています。