――ケースにチタンを使い始めたのはいつごろからですか?
井崎 「DW-8200フロッグマン」 というシリーズがあるのですが、それがチタンのケースを使った最初のモデルですね。チタンは軽くて錆びず、人体にやさしい素材なのですが、実は加工が非常に難しい素材なんです。ただし、フロッグマンは外側にウレタンがきます。したがってチタンはほとんど隠れていまして、表面だけ見えている状態(つまり、加工しやすい)なのですが、MR-Gのように全部チタンで見せるには加工技術の進化が急務でした。
もちろん、トップモデルのMR-Gでやるからには「加工技術の問題でこういうカタチになりました」などとお客様には説明できません。あくまでG-SHOCKらしい力強いカタチを追求しなければなりません。またG-SHOCKはどのモデルもそうなんですが、ベゼルがサイドボタンをガードして落下時に直接あたらない構造となっています。当然フルメタルでもそうしたG-SHOCK独特の形状にする必要があります。ですから、チタンをそういうカタチに加工する技術と、さらにそこへ磨きを入れる技術が求められます。他社製の高級品ではもっと磨きの入れやすい形状になっていると思いますが、そこをシンプルにしてしまうとG-SHOCKとしては成り立たないのです。
――外側だけでなく、プレミアムなラインにあうよう基本的な性能も上げなければなりませんよね
井崎 その通りです。特にG-SHOCKは、20気圧防水仕様なので電池を交換する際、防水試験などを行わなければならないため交換費用が高くなってしまいます。このため、長く使っていてもお客様の負担にならないよう、1998年からソーラー化を順次進めていきました。また時計なので時刻は正確でなければいけないという理念から電波化も推進し、現在電波ソーラーを標準スペックとしています。
――中の文字盤などもどんどんよくなっている印象ですが
井崎 同じ電波ソ-ラーでも、2003、2004年に出したモデルでは文字盤がまだ紫色をしています。これは当時必要な電力を光から作り出す為、ソーラセルの上にある文字盤への華燭ができなかったからです。ただ質感を上げていくためには文字盤への華燭は必須でしたので、中身の省電力化などにより、文字盤を着色できるようになりました。
また、文字盤の時字もMR-Gでは違っています。普通の時計は落下衝撃の基準がG-SHOCKほど高くないので、同じような取り付け方では落とすと時字が取れてしまいます。そこでMRG-7500からはG-SHOCK用の特別な時字の取り付け構造を開発し、採用しています。又、通常針の真ん中に穴があいていますが、MRG-8000では穴をなくしています。これは、ノンホール針という高級品を使用することにより実現しました。ただしG-SHOCKに採用するには耐衝撃構造にしなければならないので、その仕様を満たすようなノンホール針をメーカーさんと共同で開発しています。