Nikon D300+AF-S DX Zoom Nikkor ED 18-70mm F3.5-5.6G

ニコン 映像カンパニー 開発本部 第三開発部 第一開発課マネジャー 岩崎宏之氏。
D3/D300のシーン認識システムの開発を担当。入社以来、主にAE関連の開発・設計に従事。主な開発アイテムは、3D-RGBマルチパターン測光、D-TTL調光、ニコンクリエイティブライティングシステムなど

--D3の水準器表示機能は面白いんですが、なぜD300にはないんでしょうか?

川路:あの機能を実現させるためには、非常に精度がいい高価なセンサーが必要なんです。D3には精度の高い縦横センサーを採用しましたので、それを応用した"ご提案機能"として試験的に入れてみたものです。今後はお使いになった方のご意見をフィードバックして、ほかのカメラも含めどういうふうに扱っていくべきかを考えようと思います。

中村:結構反響が大きいんですよね。予想以上に(笑)。

--今回シーン認識システムが搭載されましたがどこまでを認識しているんでしょうか?

岩崎:今回、シーン認識システムとして謳っているのは、1個の機能ではなく、1005分割センサーで認識した結果をAFやAE、オートホワイトバランス(AWB)などにいろいろ使うという機能のパッケージの名前なんです。たとえばAFには51点3Dトラッキングという被写体を追尾する機能が入っていますし、AWBには光源を判別するという技術を使ったり、AEではハイライトを検出してシーンを推定するという技術を使っています。最終的にこのシーンは何だ、というものを判別するものではなくて、撮影に役立つ情報を出力するようになっています。

コンパクトカメラの顔検出機能はニコンも含めて何社もやっていますが、今回D3とD300に入っているシーン認識では1005分割センサーですので、顔のテクスチャの検出まではできません。できることとしては、被写体の追尾ですとか、オートエリアAFに主要被写体への合焦率を向上させる策として前景と背景をおおまかに判別するようになっています。

--ピクチャーコントロールで、以前のカメラと同じ色に合わせることは可能でしょうか

川路:今回、D2XシリーズのモードI・II・IIIと同じ色になるピクチャーコントロールを提供することになりましたが、それ以外のカメラについては計画はありません。今までのいろんなカメラで微妙に違う画調を提供してきましたが、今回の「スタンダード」「ニュートラル」「ビビッド」の標準装備の画調は、従来機種で積み重ねてきたノウハウの集大成として作っています。

どうしてD2X画調を設定したのかというと、移行期にD2Xシリーズと併用される方のためです。商品撮影などで色に非常に厳密な撮影をなさっているスタジオカメラマンさんですと、照明の状態と撮影される色のデータを持って、バッチファイルを整備されている方もいらっしゃいます。新しいカメラで撮影条件や処理条件を整備し直すのは手間がかかりますから、D3やD300を導入してすぐに使っていただき、かつ、同じ画調で納品できるように用意しました。新しいピクチャースタイルには最新の研究の成果が盛り込まれていまして、色の分解能、ビット数や精度が上がっていますので、ゆくゆくはぜひこちらをお使いいただきたいと思います。Capture NXと、現在ダウンロードできるViewNXでもすでにPicture Control Utilityが利用できるようになっています。

--今回HDMI端子が搭載されましたが、これはユーザーさんからの要望ですか?

川路:HDMI端子つきTVの普及の問題や、HDMI端子を通したデジタルカメラ画像のハイビジョンでの画質について一般的には認知度が低いので、開発時点では大きなユーザー要望とまではなっておりません。でも実際に使ってみると「おぉっ」ていうほど画質がいいんです。今までのテレビ接続は"見られる"というだけのものでしたが、ハイビジョンとHDMIを使ったデジカメ画像の表示画質は鑑賞に耐えるものがあるだろうと。

それと、ハイビジョンのテレビが急速に世の中の標準になりつつあります。新品でテレビを買われる場合、特に日本や欧米ではほとんどハイビジョンじゃないでしょうか。そうなると、今まで画質ゆえに「テレビなんて」と思っていた人でも、一回見ると「これはちょっとすごいね」と思うでしょう。プリントまではしないけど、昔でいえばスライドをぱっと出すような感じで、明るい部屋でプリントよりも大きな画面で簡単に見られる。いろんな用途、たとえば家庭で見る機会も増えるでしょうし、もっと大きなプレゼンテーションでもすごく説得力が出てくると思います。特に今後のハイビジョンというかHDTVの増加を考えますと、絶対的な必要事項になってくるだろうと判断して搭載しました。

中村:出力内容はハイビジョン放送と同じ、HDMI規格の「1080i」に基づいた高画質な出力です。端子は、小さい端子の規格決定が遅かったことと、大きいほうが強度もしっかりしているということで大きい端子になりましたが、かなりスペース的に厳しかったですね。今までのテレビっていう感覚を持っていると、なんでこんなものっていう話しになるんですが、HDMI接続のハイビジョンでの絵を見るとやっぱり入れてよかったということになると思います。

--なるほど。本日はありがとうございました

水準器機能を利用するとファインダー内右側にバーが表示される。+が右側、-が左側に傾いていることを示す

シーン認識に利用している1005分割RGBセンサー

HDMI端子がD3/D300双方に搭載され、ハイビジョンテレビで画像を鑑賞できる

聞き手:平雅彦(WINDY Co.)
撮影:加藤真貴子(WINDY Co.)