キーワードは"インターナショナル"

土屋氏は「今年は2008年以降につながる良いラインができた」と断言する。そのラインはどこへ続こうとしているのだろうか。

「インターネットの非常に大きなキーワードは"インターナショナル"だと思うんです。例えば、昔はアメリカのNBCで面白い新番組が始まったとしても、ニューヨークでビデオテープを手に入れて空輸で日本に飛ばすしか方法がなかった。でも、いまはインターネットでボタンひとつ押せば見られるわけじゃないですか。それこそYouTubeなんて、日本から海底ケーブルを伝ってアメリカのサーバーに動画が投稿され、それがまた海底ケーブルを伝って日本で見られる。配信コストもタイムラグも、限りなくゼロなわけですよ。インターネットの普及によって、世界はすごく狭くて身近なものになっているんです。ところが、日本のコンテンツメーカーはまだ、そういうインターネットの利点でもある"インターナショナル"な側面を使ったコンテンツ作りをやっていないんです。僕らは今後、その分野を開拓していかなければならない、と思っています」

その一環として、来年にも世界中の若きクリエイターたちの作品を、第2日本テレビの番組で紹介していきたいという。

「今年、リーバイスさんと一緒にやった6秒ウェブCMコンテストのようなものを、今度はインターナショナルにやりたいんです。例えば、日本を含めて、いろんな国のクリエイターがセカンドライフ上でドイツの看板を作るとか。『賞金200万リンデンドルですよ』って言ったら、僕は結構な数のクリエイターが応募してくれると思うんです。で、僕ら審査員は応募作品を見ながら『スペインの○○くん、いいねぇ』とかやるわけですよ(笑)。現実に、それができる日はすぐ目の前にあるんです」

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突破口を自分の手で作ってみたい

この試みは、世界のクリエイターを日本に紹介できるだけでなく、日本のレベルの高さを改めて世界に提示できるチャンスでもある、と土屋氏は考える。

「日本は学生でも、すごくレベルの高い作品を作りますからね。世界はきっとビックリすると思うんです。それで、作品を見た外国のクライアントがうちに向かって発注するということが、来年のいまごろには当たり前にできている可能性は十分ありますから。その突破口を自分の手で作ってみたいんです。実は、2006年に第2日本テレビで配信した松本人志のコント『Zassa』の英語版も、一応作ってあるんですよ。そういうものも、どんどん世界に配信していきたいですね」

土屋氏は常に臆することなく、まっすぐ前を見ているようだ。

「僕は走り続けることしかできないんですよ」

笑いながら去っていった土屋氏の背中は堂々としていて、頼もしい。止まることを知らない彼は、今後も世間をアッと言わせるコンテンツを放ち続けるに違いない。

土屋氏が影響を受けたこの1冊~『芸術起業論』村上隆

「"物を作る"ということを、ビジネスベースに持っていくアプローチ方法を提示している本。クリエイターだけでなく、ビジネスマンにも薦めたい一冊です。ビジネスをやる方がコンテンツを手掛ける際、クリエイティブを理解することが"逆のアプローチ"になると思いますから」(土屋氏・談)
◆日本人初の偉業を次々と成し遂げ、世界からの注目を浴び続けるアーティスト・村上隆。彼が「アート=ビジネス」という自身の論理に基づいて書いた本。彼のペインティング『NIRVANA』に1億4400万円の値が付くまでの戦略、日本と日本人のプロダクツを"世界市場で通用する商品"にするためのノウハウが記されている。本書には彼の鬼気迫るアートへの姿勢も綴られており、物作りとは何なのかを改めて考えさせられる内容だ。幻冬舎刊 1,680円

土屋敏男 (つちや としお)

1956年9月30日生まれ、静岡県出身。一橋大学社会学部卒業後、1979年に日本テレビ入社。『天才・たけしの元気が出るテレビ』(1985年~96年)、『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』(1989年~)の演出を手がけた後、『電波少年』(1992年~2003年)、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(1996年~2002年)など、多くのバラエティー番組をプロデュースする。2001年には編成局編成部長に就任し、コンテンツ事業局次長などを経て、現在は編成局デジタルコンテンツセンター エグゼクティブディレクター。