『オキナワ 男 逃げた』は"トライアル"
「ドラマじゃないかもしれない」という『オキナワ 男 逃げた』。土屋氏はこの作品を「トライアル」だという。
「作り手、脚本家、演出家、俳優の思いをすべて乗せて物語を提示するのがドラマだとすれば、"視聴者の意見によって揺れる"ということ自体がドラマじゃないのかもしれない、と思うんです。むしろ、今回は新しいエンタテインメントの形、インターネットを使って物語を紡いでいくことへのトライアルですね」
では、『オキナワ 男 逃げた』の新しさは、具体的にどこにあるのだろうか。
「従来のドラマは、まず番組で90%くらいが描かれて、残り10%を掲示板なり公式サイトのコンテンツなどで補強する形ですよね。でも、ブログ上で展開されたことを映像としてまとめる『オキナワ 男 逃げた』はブログが80%、番組が20%という割合なんです。もちろん、番組では主人公たちの行動を描いていきます。でも、行動を起こした理由や、そこに至るまでの細やかな心の動きはすべてブログにある。つまり、番組を見ただけでは物語の全容はまったく掴めないんです」
ブログ主導型のドラマ。その山場は12月5日の初回放送後から、12月19日の第2話放送前までの2週間にあるという。
「12月5日の放送ラストで、まず主人公の美羽から『あなたならどうしますか?』という弾が投げられる。そこから、ブログ上で書き込みを通してやりとりが行われ、12月19日放送分のエンディングが決まるわけです。つまり、この2週間で僕らがどれだけ視聴者の声に反応できるかどうかがポイント。放送前から"虚構"と分かった上で、皆さんが美羽に対して真剣なコメントやアドバイスを書き込んでくれていて、僕らはそこに対応する大変さや痛みを感じてきているわけですが、本当の雷や暴風雨にさらされるのはこれから。最後の2週間、僕ら自身も視聴者の生の声にちゃんと耐えられるかどうか……。ここが一番の勝負どころになる、と思っています」
新しいエンタテインメントの可能性
この"新しいエンタテインメント"が、果たして視聴者に受け入れられるかどうか、というのも制作側としては懸念材料なのではないだろうか。
「正直言って、受け入れられるかどうかは、僕らもまだ分かりません。でも、これまで観たことのないものになる、とは確信しています。ですから、今回は視聴者に対して『こういう楽しみ方もありますよね?』、『こういうやり方はエンタテインメントになりえますか?』という提案だ、と思っているんです」
土屋氏個人としては、『オキナワ 男 逃げた』が取るブログ連動型スタイルを、連続ドラマにも応用できるとにらんでいる。
「例えば、『24 -TWENTY FOUR-』(2001年~)はリアルタイムで物語が進み、CM中も同時進行で時間が進んでいるという点が新鮮だったわけです。そういうことを今度はブログ連動で毎週やっていくのも、可能性としてはあるかな、と思いますね」