ヨーロッパ基準と国内基準の違い

旧ISO-FIXと新ISO-FIXはチャイルドシートの取り付け方法だけでなく、型式認定の試験内容そのものが異なるため、まったく別物といえます。クルマのカットモデルにチャイルドシートを装着し、ダミーを乗せて50km/hの前面衝突と同様の衝撃を発生させるのは新旧とも同じですが、その基準値やジャンル分けが異なります。

従来の国内基準は、前向きの幼児用チャイルドシートのみに頭部前方移動量や傷害値などの基準値を設けていました。しかしヨーロッパ基準は、乳児用や学童用にも基準値を設けています。また、前面衝突のほかに後方衝突も評価します。試験項目が増えたため、国内基準より試験基準が厳しくなったと言えます。どちらの基準に対応しているかは、チャイルドシートについている「型式指定マーク」で見分けることができます。

新たに採用されたヨーロッパ基準は、ISO-FIXチャイルドシートだけでなく、従来のシートベルト固定式チャイルドシートにも適用されます。現在、ヨーロッパのシートメーカーである「レーマー」や「レカロ」などは、ヨーロッパ基準を採用したシートベルト固定式チャイルドシートを販売しています。

今回の基準改正は、新基準を2012年7月までに完全適用するというものです。2012年6月までは現行基準で作られた旧ISO-FIX車両と旧ISO-FIXチャイルドシート、シートベルト固定式チャイルドシートの製造・販売には猶予期間があります。また、基準改正は、生産側に対するものであって、消費者が旧規格製品を使用することは2012年以降も認められています。

国土交通省型式指定マーク。現行基準マーク(右)と新基準マーク(左)

ヨーロッパ基準(ECE R44/04)と現行国内基準の違い

安全基準試験とアセスメント試験の違い

チャイルドシートを選ぶときに役に立つのは、「チャイルドシートアセスメント」です。これは国土交通省と自動車事故対策機構がチャイルドシートの安全性能について試験を行なうもの。前面衝突試験と使い勝手の使用性評価試験を行ない、「優・良・普通・推奨せず」などで評価します。

では新しいヨーロッパ基準をクリアしたチャイルドシートが、チャイルドシートアセスメントでも良い成績が取れるのかというと、そう簡単ではないようです。アセスメント結果を見ると、乳児用、幼児用の両方において「優」の成績を取ったものは、タカタが従来の国内基準で型式認定を取った「takata04-neo」しかありません。新基準に適応しているチャイルドシートの中には、アセスメントで「普通」の評価のものもありました。

新基準=アセスメント好成績とならないのは、テスト方法などが異なるためです。認定の試験でチャイルドシートを固定するのはヨーロッパ基準(ECE)で決められた試験用の台車ですが、アセスメント試験ではエスティマのホワイトボディ(骨組み)を使用します。評価方法は2列目のシートにチャイルドシートに取り付け、ダミーを乗せて前面衝突の衝撃を発生させて評価します。衝突速度も型式認定試験の50km/hより一割り増しの55km/hに設定されています。また、試験で使用する座席シートも、型式認定試験では専用の試験用シートを用いるのに対し、アセスメント試験では実際の座席シートを用います。アセスメント試験方法のほうがより実際に乗っている状態に近い状態で試験しています。

また、アセスメントはミスユースを防ぐ観点で、「取り付けやすさ」や「マニュアルのわかりやすさ」など使用性評価試験も評価していて、安全性と使用性評価を総合した評価がアセスメントの結果になります。安全基準とは最低限の守らなければいけない基準値であって、その上でどのくらい安全なのかを評価しているのがアセスメント評価だともいえます。

型式認定試験方法。試験用台車を使用し、試験用のシートにダミーを乗せて、50km/h相当の衝撃で評価

アセスメント試験方法。車両のホワイトボディを使用し、実際のシートにダミーを乗せて、55km/h相当の衝撃で評価

使用性評価試験の評価方法