新しいチャイルドシート規制の意味
子ども(未成年者)の死亡原因の統計を見てみると、「不慮の事故」のうち、「交通事故」もかなり大きな割合を占めているようです。それもあって2000年から新生児から6歳未満の幼児にチャイルドシートの着用が義務づけられました。違反するとシートベルトの違反と同様に1点の減点となります。そして2006年10月1日からチャイルドシートの安全基準が改正されました。従来チャイルドシートは、国内基準、ヨーロッパの基準(ECE R44/03)や米国の基準(FMVSS No.213)を適用していました。それを新しいヨーロッパ基準(ECE R44/04)に統一しようというのです。この改正の理由は、チャイルドシートが正しく装着されていない、正しく使われていないという現実が明らかになってきたからです。
シートベルトで固定する汎用チャイルドシートは、車両に固定する場合に大きな力が必要だったり、シートベルトの通し方を間違えたりなど、7割以上が誤った使い方(ミスユース)をしていると、警察庁とJAFの合同調査結果で報告されています。誤った使い方では安全性能が発揮されず、危険な状況を招きます。これについてはJAFのサイトで詳しく説明されています。
今回の改正は、チャイルドシートの誤った使い方を減らすため、簡単・確実に取り付けできる「ISO-FIX」の普及を狙ったもので、これは車両とチャイルドシート側に汎用の金具を取り付ける国際規格です。ただ注意したいのは、今までも「ISO-FIXのチャイルドシート」は存在していたということ。従来、日本には汎用的なISO-FIXの規格はなく、車両とISO-FIXのチャイルドシートのセットで型式認定(車両別限定型式認定)を取っていたのです。そのため「ISO-FIX」と呼ばれていても、結局は車両が限定されたメーカー純正品のISO-FIXチャイルドシートしかありませんでした。構造的に異なるメーカーの車両に取り付けられても、使用は認められず保証もされません。これではISO-FIXが普及しなくて当然です。
そこで新基準では、汎用的なISO-FIXチャイルドシートを導入するため、同時に自動車基準を国際基準に合わせるため、ヨーロッパ基準(ECE R44/04)を採用しました。今回の改正では、チャイルドシート側はもちろん、車両側にもISOFIX取り付け装置を備えることが義務づけられます。そしてセットで型式認定を取らなくても、それぞれが新基準をクリアしていれば保証されるようになったのです。
汎用性ISO-FIXチャイルドシートを使用する条件
新しいISO-FIXチャイルドシートの安全性などについては次ページで解説しますが、まず注意したいのは、新ISO-FIXチャイルドシートは、旧ISO-FIXの車両に装着できてしまう可能性があるということです。新ISO-FIXの固定では、シート下部のコネクタ以外に上部の「トップテザー」と呼ばれる部分の固定が必要になりますが、下部のコネクタ部は旧ISO-FIXとほぼ同じのため、装着できてしまうことがあります。しかしこれでは十分な安全性が確保できません。
新ISO-FIXチャイルドシートは汎用性がありますが、車両側にも新ISO-FIXに対応していることが求められます。つまり、「旧ISO-FIX車両と旧ISO-FIXチャイルドシート」もしくは「新ISO-FIX車両と新ISO-FIXチャイルドシート」の組み合わせしか使用が認められていないのです。これを守らないと違法になり、なにかあったとき保証を受けることもできません。
といっても、新しいISO-FIXチャイルドシートが普及するには、まず新ISO-FIX対応の車両が普及しなくてはいけません。新基準・規格は始まったばかりで、普及はまだこれからです。現在のところ(11月4日現在)、新ISO-FIXに対応した国産車両は、トヨタの「ランドクルーザー」と「マークXジオ」の2車種だけです。もし、販売される新車がすべて新ISO-FIXに対応しても、車両の寿命は長いため、世の中の6~7割を占めるようになるまでには15年以上かかるといわれています。
欧州車についてはどうでしょうか? 新ISO-FIXの規格が欧州生まれということもあり、現在輸入されている欧州車には新ISO-FIXの固定具がほとんど付いているそうです。国土交通省によると、欧州の「ECE R44/04」をクリアしていれば、日本でも新ISO-FIXとして使えるということですが、各車両について確認が取れたわけではありません。各ディーラーやチャイルドシートメーカーなどに組み合わせの確認を取ったほうがいいでしょう。