ワット性能の高さは非常に優秀

前述のとおり、ATI Radeon HD 3800シリーズは、ワット性能の高さも商品価値として強くアピールしている。そこで「ワットチェッカー」を使い、3D描画時のシステム全体の消費電力をチェックしてみた。なお、3D描画時の消費電力は、3DMark06のGame Test2の実行中のものを計測。目視によって安定点を計測している。

消費電力については、テスト結果を見る限り、55nmプロセス化の効果は絶大だと言わざるを得ない。Geforce 8800 GTも、8800 GTXやGTSに対して消費電力を大きく下げたことに驚いたものだが、このクラスのGPUでアイドル時100W未満という値を記録するのは、その驚きをはるかに上回る結果である。例えるなら、ミドルレンジクラスのボディに1ランク上のエンジンを載せた車という感じだろうか。軽作業にも使いやすい省電力デザインだが、いざという時にはそれなりのパワーを出せるという点は、これまでのGPUには見られなかった特徴だ。

だが、グラフィックスカード全体の発熱に関しては、ATI Radeon HD3870/3850の双方ともにかなり熱くなるため、55nm化したからといって扱いやすくなったという訳ではないようだ。特に薄型クーラーを採用したATI Radeon HD 3850は、3D描画時にファンが激しく回転し、エアフローに気をつけないと、熱による誤動作と思われる不具合に遭遇する場合もあった。この点は、ライバルのGeForce 8800 GTも同じ傾向にあるが、いずれにせよ残念な点であることは否定できないだろう。

ミドルレンジからのステップアップ用としては最適だが……

単純にベンチマークテストのみを見ると、GeForce 8800 GTに完敗という結果となったが、ATI Radeon HD 3800シリーズの出来は決して悪くない。ATI Radeon HD 2900シリーズには組み込まれていなかった、次世代メディア向けの動画再生支援機能「UVD」を搭載しているため、下位版のATI Radeon HD 3850は一般ユーザーからカジュアルゲーマーまで、幅広い層で活躍できるスーパーミドルレンジクラスに仕上がっている。もちろんシリアスゲーマーには上位版のATI Radeon HD 3870がオススメだ。

では、マニアというかエンスージアストの人は……と問われると、今回の2製品はちょっと帯に短したすきに長しという感が強い。ATI Radeon HD 3870のパフォーマンスは決して低くないが、頑張ったところでGeForce 8800 GTレベル。ATI CrossFire環境を構築せずにGeForceシリーズに対抗するとなるとちょっと厳しい選択だ。だが、ATI Radeon HD 3800シリーズでは今後、HD 3870のGPUをグラフィックカード上に2つ搭載した「ATI Radeon HD 3870 X2」のリリースも予定されている。カード1枚でATI CrossFireを構成できる点は非常に魅力的だ。とはいえ、そんなRage Fury MAXXモドキよりもメモリバス幅を512bitにしたモデルを出してほしいというのが正直なところである(ATI Radeon HD 3870 X2を2枚使った4GPUによるATI CrossFireというのはかなり魅力的な存在だが……)。当然、今後NVIDIAもG92ベースで既存のラインを再構築するだろうし、DirectX10.1にも新GPUでキッチリと対応してくるはずである。今後どのようにAMDが立ち回っていくのかが注目される。