ターゲットによらないオートフォーカスの速さ

L10の性能や絵づくりについて。まずはオートフォーカスの速さだが、これはコントラスト検出ではなく、位相差式でチェックした。結果は平均で1.0秒(EV5)というなかなかの速さだった。EOS 40Dの0.6秒には及ばないものの、E-510やD80などよりも速い。また、ターゲットにも左右されず、ピントをちゃんと探し出すのがいい。逆に気になる点は、同じターゲットでも合焦時間にムラがあることだ。実際の使用では、同じ被写体でも合わせ直すとちゃんとピントが合う、という感じになるだろうか。

このようなターゲットを用意し、位相差式の中央固定でレリーズから撮影までの時間を測定した
14-50mm F3.8-5.6 / L+Fine(JPEG) / 50mm(100mm相当) / マニュアル(F5.6、1/60秒) / ISO:100 / WB:オート / FM:スタンダード

テスト結果。EV5で平均1.0秒、EV1で1.5秒は悪くない。明るければほとんどのカメラが苦手としている斜線ターゲットでもちゃんとピントが合う

レンズの性能が支える高い解像力

解像力は素晴らしい。1900TV本あたりまで解像している。もちろん妙な偽色も発生せず、実にキレイに解像する。なにより、撮影したテストチャートがまるでスキャンしたようにキレイなのに驚く。ほかのカメラの画像と比べてみたのだが、レンズの性能が格段にいいことがわかった。毎回テストではそのカメラとセット販売されているレンズを使うのだが、ほとんどは価格を抑えるためにあまり上等なレンズは組まれていない。しかしL10のセットであるライカ D バリオエルマーは、単品で10万円近い値段が付けられている。14-50mm F3.8-5.6と、それほど明るいレンズではないが、チャートのスミまで光を均等に送り、周辺での流れも非常に少なく、色にじみもほとんどない。このレンズがあってこその高解像力なのだろう。

解像度のチャートを撮影。非常にフラットで、スミまで正しく解像している
14-50mm F3.8-5.6 / L+Fine(JPEG) / 50mm(100mm相当) / プログラムAE、補正+0.7EV(F5.6、1/20秒) / ISO:100 / WB:オート / FM:スタンダード
オリジナル画像はこちら

ノイズは一般的だが、さらに高感度がほしい

ノイズは一般的なところ。ISO 400ではほとんどノイズは見られず、像も非常にシャープだ。ISO 800になってもざらつきは見られないが、コントラストが若干下がり、細部の解像力が落ちてくる。ISO 1600ではさらにコントラストが下がり、ざらつきも発生する。それでも妙な色ノイズは発生していない。これならISO 3200など、さらに高感度があってもいいのではないか。ユニークなのは[フイルムモード]の各モードごとでノイズリダクションが設定できること。例えばカラーモードならノイズを抑え目にして、モノクロならノイズを出してもかまわない、といった設定も可能だ。

ノイズ比較用の撮影。以下は、こういった画像をトリミングしたもの。標準の[長秒ノイズ除去]はオンのままだが、最長で1/20秒なので動いてはいない。各フィルムモードのノイズリダクションは「±0」のまま
14-50mm F3.8-5.6 / L+Fine(JPEG) / 50mm(100mm相当) / プログラムAE / WB:オート / FM:スタンダード

ISO 100

ISO 200

ISO 400

ISO 800

ISO 1600

抜けいのいい画像、ホワイトバランスは過敏か?

色はどうだろうか? 最初の感想は"キヤノン風の絵づくりだな"ということだった。全体に青のコントラストが強く、抜けがいい。全体に鮮やか傾向だが、しかしDMC-L1で気になった人工物などの色の不自然さもほとんど気にならない。うまくチューニングしたと思う。また、輝度を変えて各色の明度を測定したが(下の「ダイナミックレンジ」のグラフ参照)、比較的直線に近いカーブになった。明るさが変わっても色のバランスが変わりにくいわけで、扱いやすい特性といえる。

露出(AE)やホワイトバランスは比較的敏感な傾向にあるようだ。三脚で固定して撮影していても、明るさが2/3段くらい変わってしまうことがあった。また、オートホワイトバランスは驚くほど性能が高い。しかし日陰の青さを補正しすぎて赤っぽくなったり、夕方の光なのに青っぽくなるなど、やや敏感すぎのようだ。もう少し抑えてもらったほうが使いやすいと思う。

色合いを変える[フィルムモード]は、カラーが6種とモノクロが3種の計9種類。標準は[スタンダード]。[ダイナミック]は鮮やかになるが、それよりもコントラストが高くなる傾向にある。[ネイチャー]は自然風景向けということで青・赤・緑が鮮やかになるが、そのぶん各色の階調も狭くなる。[スムーズ]はコントラストが少し低めになるが、彩度が下がるわけではない。以上4つのモードはL1でもほぼ同じで、それぞれの差はさほど大きくない。

"もっと大幅に色を変えてほしい"という意見があったのだろうか、L10では極端に色を変えるモードがふたつ追加された。[ノスタルジック]は彩度低めで年月の経過をイメージしたモードとのことだが、特に青色の彩度が大幅に下がる。まず青のレンジを使い切ることはないだろう。[バイブラント]は"鮮やか、いきいき"という意味だが、[ダイナミック]よりもさらに彩度が高くなる。コントラストも高くなるということだが、見た目では少しアンダーにしてより色を乗せている感じだ。この[ノスタルジック]と[バイブラント]はかなりクセのあるモードだ。使うシーンを選びたい。

モノクロは[スタンダード][ダイナミック][スムーズ]の3種類。それぞれカラーの同名モードをモノクロに置き換えたものと考えていいだろう。[スタンダード]は中間の明るさが多く、モノクロとしてはメリハリに欠ける傾向がある。[ダイナミック]のほうがモノクロとしては使いやすいと思う。また、十分検証ができなかったが、モノクロの[スムーズ]は若干ガンマカーブを下げたような絵づくりをしているようだ。これはこれでおもしろいと思う。

フィルムモードの比較撮影。以下はフィルムモードのみを変更して撮影したもの
14-50mm F3.8-5.6 / L+Fine(JPEG) / 37mm(74mm相当) / プログラムAE(F5.3) / ISO:100 / WB:オート

フィルムモード:スタンダード

フィルムモード:ダイナミック

フィルムモード:ネイチャー

フィルムモード:スムーズ

フィルムモード:ノスタルジック

フィルムモード:バイブラント

フィルムモード:スタンダードB&W

フィルムモード:ダイナミックB&W

フィルムモード:スムーズB&W

彩度の高い被写体を用意し、画像の一部(200×200ピクセル)のヒストグラムを比較したのが次の図
14-50mm F3.8-5.6 / L+Fine(JPEG) / 45mm(90mm相当) / マニュアル(F8、1/60秒) / ISO:100 / WB:マニュアル

高彩度被写体の部分ヒストグラム。[ネイチャー]は単に彩度を上げたものではなく、階調を拾っているのがわかる。[バイブラント]は非常に彩度が高く、階調が痩せる。意図的に使うほかは避けたほうが無難

「ダイナミックレンジ」としているが、明るさによる輝度変化のチェック。それをまとめたのが次のグラフ。明るさはシャッター速度で調整している
14-50mm F3.8-5.6 / L+Fine(JPEG) / 50mm(100mm相当) / マニュアル(F5.6) / ISO:100 / WB:マニュアル / FM:スタンダード

ダイナミックレンジ。比較的ストレートな線となった。露出が変化しても色のバランスが変わらないので、扱いやすい特性といえる

ホワイトバランスを変更して撮影。蛍光灯モードがないのがユニーク
14-50mm F3.8-5.6 / L+Fine(JPEG) / 14mm(28mm相当) / プログラムAE(F5) / ISO:100 / FM:スタンダード

夕方の赤めの光で撮影。各カメラは標準状態となっている。他が赤(黄色)っぽい色となっているのに対し、L10は見事なほど正しいグレーとなった。しかし少々やりすぎの感あり?