自分撮りもできるフリーアングルモニター
さてライブビューである。L10のライブビューはとても簡単だ。背面左上の「LIVE VIEW」ボタンを押せば、すぐにモニターに像が表示され、ライブビューに切り替わる。
ライブビューの特長はリアルタイムで色の具合などが確認できることだけでなく、両目でフレームを確認できる点も大きなメリット。両目だからフレームの隅までよく見える。フリーアングル液晶は、背面から見て左に180度まで開き、さらに前後に270度回転することで、どのアングルでもモニターを正対して見られるようになる。液晶モニターは斜めからでは明るさが変わってしまうなど、正しく見えないこともあるが、フリーアングル液晶ならそういったこともない。コンパクトカメラではいくつか同様の機構は存在したが、一眼レフとしてはL10が世界初となる。
フリーアングル液晶を使ってのライブビューは楽しかった。今回の撮影でも草むらのなかにカメラを突っ込んでみたり、動物を下から撮影したりと、広告コピーの"未知のアングルに挑戦できる"のとおり普段はできない撮影ができた。
ユニークなのは、自分撮りで鏡像表示になること。レンズを自分に向け、モニターもひっくり返せば自分を見ながら撮影できるが、このとき、鏡に写った像のように左右が入れ替わって映るのだ。使ってみればわかるが、位置決めにはこのほうが操作しやすい。もちろん撮影された画像は正しい向きになる。こまかなことだが、よく考えてある。
注意点としては、ハイアングル・ローアングルなどの手持ちのライブビューでは、手ブレしやすいこと。標準レンズの14-50mm F3.8-5.6のように、手ブレ補正機構がぜひ欲しい。また、今回の撮影で気付いたのは、フリーアングルモニターを引き出して撮影すると、水平がとりづらいことだった。カメラ位置とモニターが別々になるため、傾いたまま撮影してしまうことが何度もあった。「GRデジタルII」のような水準器が欲しいところ。
またライブビューでは、画像がビデオ出力されないのが気になった。スタジオ撮影などでは、テレビにつないでモニタリングする人も少なくない。本体の液晶モニターよりも大きな画面で見たほうが見やすいからだ。これは、ぜひできるようにしてほしい。
顔認識も可能なコントラストAF
ライブビュー時のオートフォーカスは、従来の位相差式AFとコントラストAFのどちらかが選択できる。位相差式は現在のほとんどの一眼レフで採用されている方式。レンズやスリットを組み合わせ、光の位相(ずれのベクトル)を検知するもので、ピントのずれの量と方向が一度に検知でき、そのため高速なピント合わせが可能になる。ただしAFポイント(測距点)それぞれに機構が必要になるため、多点測距にするにはそのぶんコストがかかる。また、撮像用とは別の光の経路が必要になるためミラー機構も必須となる。
対してコントラストAFは、撮像素子に映る像そのものを調べてピント位置を決めるもので、コンパクトタイプのデジカメはほぼすべてがこの方式を採用している。手前か奥かといったピントの方向がわからない、検出に時間がかかるという欠点はあるが、最近ではノウハウが蓄積され、ずいぶん合焦が速くなっている。像全体を見ているため、画像のどこでもピントを合わせられるし、顔認識をはじめとした被写体認識とも組み合わせられるというメリットもある。L10は一眼レフとして初めてこの可能性に踏み込んだわけだ。
オートフォーカスの方式を切り換えるには、カスタムメニューの[LIVE VIEW時AF]で選択する。位相差式ではモニターに光学ファインダーと同じ測距点が表示されているが、コントラストAFではそれがなくなり、切り替わったことがわかる。コントラストAFの合焦速度はそれほど速くないが、納得できるレベル。スナップのように瞬間を狙うなら位相差式のほうがいいが、風景撮影など、ゆっくりと構えて撮影できるならコントラストAFで十分だ。
コントラストAFのAFモードは6つもある。人物の顔を認識してピントと露出を合わせる[顔認識]のほか、[9点][マルチ][3点][1点][スポット]が選択できる。しかしほとんどは自動でピント位置が選択されるゾーン選択で、任意の位置に合焦できるのは[1点]か[スポット]のみ。[スポット]は11点の指定された位置から1点を選ぶ方式だが、コントラスト検出なのだから、もっとピント位置が自由にできるとおもしろい。併せて、先のページで撮影後の自動拡大表示が便利だと述べたが、拡大されるのは中央部のみ。コントラスト検出はAFポイントの自由度の高さも特長なのだから、ピントを合わせた位置を拡大してほしいと思う。
不思議なのは、コントラストAFでも撮影時にミラーがカシャカシャ動くこと。本来であれば、シャッターのみ動き、ミラーは上げっ放しでかまわないはず。問合せたところ、仕様のため動いてしまうそうだ。
仕様関係でもうひとつ残念なのは、専用レンズ以外はコントラストAFが使えないこと。現状では、セットが組まれている14-50mm F3.8-5.6(L-RSO 14050)と、高倍率ズームの14-150mm F3.5-5.6(L-RS014150)の2本のみ。オリンパス製はもちろん、従来のパナソニックレンズでもコントラストAFは使えない。これはコントラスト検出のためにはピントをサーチするため、レンズも最初からそれを考慮した設計にしないといけないのだという。なんとも残念だ。