初めての海外映画祭での洗礼

『鉄男』でローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得しているほか、『六月の蛇』でベネチア国際映画祭コントロコレンテ部門審査員特別賞に、『ヴィタール』でフリュッセル国際映画祭銀鴉賞に輝いている塚本晋也は、ベネチアでは審査員を務めるほどの世界標準の映画人であり、クエンティン・タランティーノをはじめ、ギャスパー・ノエ、ジェームズ・ワン&リー・ワネルなど、世界の名だたる映像作家たちが塚本フリークを公言するほどの存在だ。

「最初に経験した映画祭で、日本との違いは強烈に印象付けられました。外国の方って、プレスの質問も明瞭で、曖昧な応答が許されない。質問の内容も辛辣で、最初の映画祭の時に、会見で『映画の中ですべて言いたいことは言ってるんで、映画を見てください』って言ったらいきなり雰囲気悪くなっちゃって(笑)。僕としては、黒澤監督も同じこと言ったんだから『絶対使える』と思ったんですけど、一切通じませんでしたね。自分の言葉で自分の映画を、言葉を重ねて説明しなくちゃならない。ただ面白いことに、無理やり喋っているうちに、自分でも新しい発見が見えてくる瞬間があって、ああ、そういうものなんだなぁ……って気付かされたりするんです。遣り取りを繰り返す中で、考えがはっきりしてくるので、自分の映画に逆輸入的に取り入れたりすることもあるくらいですから」