トプコンソキアポジショニングジャパンとオートデスクは5月28日、両社主催による「墨出し・杭打ち BIM & クラウド連携セミナー」をベルサール東京日本橋にて開催した。同セミナーは、トプコンの測量機「Topcon LN-100」とオートデスクのBIMソフト「Revit」、CIMソフト「Civil 3D」がどのように連携し、墨出し、杭打ち業務において大幅な業務効率が達成できるのかを、実際の業務で活用するユーザーを迎えて事例を紹介するほか、トプコンおよびオートデスクが具体的な製品情報を紹介する内容だ。
最初のセッションは、トプコンソキアポジショニングジャパンによる『施工BIM/CIMソリューションについて〜3D計測機器と連動システムのご紹介〜』と題された講演だ。
登壇した ICT推進部 営業開発グループの菊池誠勇氏は冒頭で、このセミナーの"主役"ともいえる3D計測機器「杭ナビ LN-100」を紹介した。電源を入れると自動的に水平を取ってワンマンで測量ができるもので、施工BIMで有効活用することができる。誰でも簡単に杭打ちができることを目的に開発された製品だが、望遠鏡も整準ねじも備えていないためトータルステーション(TS)ではないという。
また、本体に角度や距離を表示する機能を備えていないが、連動するソフトウェアが充実しており、利便性と多様性は圧倒的に向上しているという。発売当初は"普段使い"のために開発された製品であったものの、その利便性から国土交通省が掲げる「i-Construction」の要領にも対応したという。
続いて菊池氏が紹介したのは、LN-100のオプションとして販売されるウェアラブルシステム「杭ナビVision」だ。同製品は、スマートグラスと音声コマンドでより直感的な操作を実現するもので、スマートグラスを装着すると杭打ちの誘導画面が目の前に表示されるため、測量士はハンズフリーになる。これにより、両手でプリズムやマーカー、スプレーを持ったまま手元から視線を外すことなく作業に集中できるという。さらに音声コマンドで操作できるため、コントローラーでの表示確認や操作をすることなく、タイミングを逃さずに記録できるということだ。観測履歴データをその場で作成し、帳票を作成しメールで送信するアプリ「杭ナビ帳票」に送信できるようになっている。
現場からは、「両手でプリズムを持てるのでプリズムを正確に立てられる」「墨出しにはペンやスプレーを使うのでスマホを持たずに済む」「スマートグラスの使用に違和感がない」「ディスプレイの誘導画面でプリズムの動きがリアルタイムに再現される」といった評価を得ているということだ。
次に、LN-100と連動して3次元の墨出し・杭打ちができる、オートデスクのiPadアプリ「BIM 360 Layout」の紹介へと移った。準備段階としてオートデスクのBIMソフト「Revit」などで制作した3D設計データをクラウドへアップロードし、iPadのBIM 360 LayoutとLN-100を接続すると、クラウドから3Dモデルを取りこんで扱うことができる。現地で測量されたデータはクラウドへアップロードされ、事務所と施工現場はクラウドを介しリアルタイムに連動するという。
従来の墨出しでは、平面図・断面図を参照して高さ情報を確認するため図面の非整合性によるミスが発生するほか、人為的ミスやデータ移行に掛かる時間のロス、履歴管理の難しさ、視認性の低さといった課題があった。しかし、BIM 360 Layoutを使えば3D BIMモデルに直接ポイントを追加できるため図面の整合性に対する問題はなく、クラウドで直接連携するため人為的ミスは発生しない。また、現場と作業所、事務所がクラウド経由で情報共有できるうえ、3D BIMモデル上に設計ポイントや測量ポイントを一元管理でき、さらに高さ関係も視覚的に確認できる。
続いて紹介されたのは、「レーザースキャナ GLS-2000」だ。ユーザー事例として、起工測量や出来高・出来形、施工計画のためのデータ取得などに活用されている現場を紹介し、とくに3次元の「見える化」が進むためわかりやすく、作業効率や生産性が向上するという感想が届いているという。また、i-Constructionにとらわれず、どんな小さな現場でもワークフローにレーザースキャナが当たり前に溶け込んで使われているとのことだ。
次に紹介されたのは、5月22日から24日に幕張メッセで開催された「CSPI-EXPO」において発表された「スキャナートータルステーション GTL-1000」だ。同製品は、自動追尾トータルステーションの上部に、70m程のショートレンジでスキャンができる3Dレーザースキャナが搭載されたもので、これ1台で測量とスキャンが可能。また、高い点群結合精度によりズレのない3D点群データを素早く自動生成できるのに加え、スキャナーとトータルステーションでデータ補強が可能。これにより、作業工程が従来方法の半分になるという。なお、同製品の発売日や価格は未定とのことだ。
最後に紹介されたのは、トプコンが昨年買収した「ClearEdge3D」製品だ。既存の建築物や構造物の3D点群データから3Dモデルを高速で自動生成する「EdgeWise」、3D点群データと3D設計データを自動照合し、建築物の品質管理を高効率化する「Verity」、主に床面の品質管理を行う「Rithm」という3つがラインアップされ、AUTODESKの「Revit」や「Navisworks」と連動して使用する。
3Dレーザースキャナで取得したデータを、TOPCONの3D点群処理ソフト「MAGNET Collage」で点群生成・データ合成し、「EdgeWise」で解析処理を行ったり、「Navisworks」で「Verity」や「Rithm」と連携して、設計データと点群データを自動比較するといった流れとなる。
このうち「EdgeWise」を使うことで、3Dモデルの作成時間が従来の方法より75%短縮できるという。また、「Verity」では設置確認や位置ずれの検査効率がアップし、従来の抜き取り検査と比べて信頼性が大幅に向上するということだ。
「Rithm」では、硬化前のコンクリートを検査できるため手戻りを軽減することや、ノイズ除去やグリッドレベル計測、ヒートマップ作成、等高線作成といった機能を搭載していると説明した。