MEMSマイクロフォン

先ほどもちょっと触れたが、MEMSマイクロフォンは現在世界トップシェアとされ、スマートスピーカーや最近だとワイヤレスヘッドホンなどに広範に利用されている(Photo20)。

  • ヘッドホンの場合、Active Noise Cancellationにマイクが必要だから

    Photo20:ヘッドホンの場合、Active Noise Cancellationにマイクが必要だからである

同社によれば、必要に応じて高SNRとか高AOP(Acoustic Overload Point:最大音圧レベル)の製品を提供できることや、例えばスマートスピーカーで使われるPhased Array Microphone(複数人が存在する環境で、どこから声が来たのかの方位検出に利用する)などで従来のコンデンサマイクよりも有利とされる(Photo21)。

  • Phased Array

    Photo21:Phased Arrayを構成する場合、それぞれのマイクの特性を揃えることが必要であり、これが出荷時に調整できるMEMSマイクロフォンは有利とのこと

ラインナップ的にも、一部アナログ出力の製品は残るものの、殆どがデジタル出力になっており、用途に応じて最適な製品を選べるようになっている(Photo22)。

  • SNRが69dBで区切られている

    Photo22:SNRが69dBで区切られているのは、スマートフォン向けは最大69dBの要求で、それ以上は不要とされることが多いからだそうである

会場ではPSoCを利用しての音声認識のデモが行われた(Photo23,24)。

  • デモそのものはPSoCを使ってキーワード+αの検出を行うもの

    Photo23:デモそのものはPSoCを使ってキーワード+αの検出を行うものだが、これはPSoC上のアプリケーションの機能であって、マイクは関係ない。で、この基板のドーターカードの左下、“Digital”とマイクのロゴの上に小さくあいた穴の下にMEMSマイクが配されている

  • ドーターカードの裏

    Photo24:ドーターカードの裏。このチップがMEMSマイクで、基板の穴を通して音を拾う形になっている

CO2センサー

Photo05で環境センサーとして示されているのがこれである。国内ではまだこれからだが、海外ではCO2濃度を1000ppm以下に抑えるような法令あるいは勧告が行われており、国内でも厚生労働省が推奨を行っている。

要するにエアコンだったり高密度住宅における換気システムだったりに、CO2濃度の測定機能を付加することで、CO2濃度を1000ppm以下に抑えようという動きである。余談であるが、CO2濃度は居眠り運転の要因の1つにも挙げられており、なので車内でのCO2濃度を検出して換気を行うような動きも自動車会社では出ている(Photo25)。

  • しきい値を超えたら換気をするといった効率的な動作が求められる

    Photo25:だからといって常時外気と入れ替えをしていたら冷暖房の効率も悪くなるし、なにより電力の無駄でもある。CO2濃度を常時監視して、しきい値を超えたら換気をするといった効率的な動作が求められる

このCO2センサーではNDIR(Non Dispersive InfraRed)方式が広く利用されている。これはCO2が赤外線を吸収する仕組みを使い、チャンバーの中に空気を通し、チャンバーの端から赤外線を発してもう一方の端でその強度を測定する。するとCO2の濃度に応じて受光する赤外線の強度が落ちるので、ここからCO2濃度を算出できるという仕組みである。構造は簡単で安価な一方、定期的な校正が必要であり、また精度を高めるためにはチャンバーの長さを長くする必要があるので小型化が難しいほか、振動に弱いといった欠点もある。InfineonはここにPAS(PhotoAcouStic)方式を利用し、NDIRと同等の精度を確保しながら小型化を実現している(Photo26)。

  • CO2の濃度を測定

    Photo26:PASはチャンバー内の空気に赤外光を当て、CO2の吸収で発生する圧力変化により発生する音(というか、振動)をMEMSマイクロフォンで捉え、ここからCO2の濃度を測定する。この方式では原理的に校正が必要ないのもメリットである

デモでは実際に部屋内のCO2濃度を測定して示した(Photo27,28)。

  • ドーターボードの上に載っているのがPAS CO2センサーモジュール

    Photo27:ドーターボードの上に載っているのがPAS CO2センサーモジュール。MicroUSBコネクタの大きさからサイズ感が掴めるかと思う

  • USB経由でリアルタイムで濃度を取得、プロットしたもの

    Photo28:USB経由でリアルタイムで濃度を取得、プロットしたもの。ドアの開け閉めとかで細かくCO2濃度が変化しているのが判る

3D磁気センサー

こちらはPhoto06ではなくPhoto07の先頭に出てくる(ので、分類的にはATV事業部なのかもしれないが、民生用にも利用されるので今回紹介されたものと思われる)。

ホール素子を3次元的に配することで、磁石を埋め込んだ対象物の角度とか移動量、回転量を非接触で測定できるのがポイントであり(Photo29)、これにより高耐久性や低消費電力、小型化が実現できるとしている(Photo30)。

  • このためには対象物に磁石を埋め込む必要はあるが、それほど強力な磁石である必要は無い

    Photo29:このためには対象物に磁石を埋め込む必要はあるが、それほど強力な磁石である必要は無い

  • パッケージは5pin

    Photo30:パッケージは5pin(I2Cの2本とVcc/GND、それとInterrupt)で構成される

実際評価キット(Photo31,32)を使ってみると、ほぼディレイなく結果が反映されている(Photo33)。

  • ジョイスティックを模したもの

    Photo31:ジョイスティックを模したもの。ちなみにあくまで評価用なので、フィードバック機構とかは当然ない

  • 3D磁気センサー

    Photo32:基板の端、2つのチップ抵抗に挟まれた正方形のものが3D磁気センサー

  • ジョイスティックを操作すると、ほぼ遅れなく画面にその結果が反映される

    Photo33:ジョイスティックを操作すると、ほぼ遅れなく画面にその結果が反映される。実際のところ、追従性はどのくらいの頻度でサンプリングするか次第であり、消費電力とのバーターという形になる

複数の動き(上下左右以外に捻りとかスティックの押し込みとか)を認識する事も可能ということで、従来の機械式の操作部の置き換え向けに提案を行っているという話であった。