三菱電機でもそれにあわせて製品ラインアップを大きく変更している。
三菱電機では、FTTH市場においては、2010年5月にG-PON用DFB-CANの出荷を開始。2016年12月には、DFB-CANの累計出荷数量が1億5000万台を達成。2021年9月には、EML-CANの類型出荷数量が500万台達成している。
一方、移動体通信システム市場では、基地局の屋外動作に対応した10Gbps DFB-CANの量産出荷を2012年10月に開始。2018年9月には、5G基地局向け25Gbps EML CANを発売。2019年4月には屋外動作対応の25Gbps DFB-CANの量産出荷を開始。2020年9月には5G基地局向け100G PAM4 Cooled EML CANを出荷した。2022年3月には、5G向け50G PAM4 Uncooled DFBレーザーを発表。業界トップクラスの広い動作保証温度範囲で、高速動作を実現し、小型光トランシーバーにおける規格互換性を確保しながら、5Gの高速、大容量化に貢献している。
データセンター市場向けでは、2015年3月に25Gbps DFB-LDを開発。2020年2月には、25Gbps DFBチップの累積出荷数量が1000万台に到達。2021年10月には、データセンター向け100G PAM4 CWDM EMLチップを発表している。同EMLチップは、光トランシーバーに4つ搭載することで、データセンターの400Gbps光ファイバー通信を実現する。5℃から85℃という広動作温度範囲の実現により、チップの冷却機構が不要となり、光トランシーバーの低消費電力化と低コスト化に貢献するという。
三菱電機の光トランシーバーモジュールは、データセンター市場から高い評価を得ている。
データセンターでは、サーバーが収められたラックの上部に搭載されたスイッチ間の通信や、データセンターの外と通信を行うためのコアルータと結ぶために光ファイバーが活用されている。とくに、大規模データセンターでは、この間の距離が長くなっており、高速、大容量、長距離通信が可能な光ファイバーの効果が発揮されている。スイッチの前面に光ファィバーを接続する際の差し込み部分に採用されているのが、脱着が可能な光トランシーバーモジュールである。
「光トランシーバーモジュールは、電気信号を光信号に変換する非常に重要なキーパーツであり、光半導体デバイスの大きさは数100μmと非常に小さく、モジュールのサイズも100円ライター程度である。通常のシリコン材料を使った半導体技術では実現できないため、化合物半導体の技術を用いている」(三菱電機 半導体・デバイス事業本部高周波光デバイス製作所 光デバイス部応用技術課長の仲井陸郎氏)などとしている。
現在、三菱電機の光ファイバー通信用光デバイス事業のうち、約39%がデータセンター向けとなっている。2015年には3%であったことと比較すると、対象市場を大きく変えていることがわかる。2015年には58%だったFTTH向けの事業規模は、2020年には25%にまで縮小。その一方で、移動通信システム向けは、8%から19%に拡大している。
「2010年代は、主にFTTH向け製品を提供してきたが、市場の進展とともに 移動通信システム基地局、およびデータセンター市場向け製品を拡充してきた。今後もますますデータ通信トラフィックが増加することが見込まれており、当社の化合物半導体の技術を活かした高速光通信デバイスの開発を進めていく」(三菱電機 半導体・デバイス事業本部高周波光デバイス製作所 光デバイス部応用技術課長の仲井陸郎氏)としている。