三菱電機は8月19日、光ファイバー通信用光デバイスの取り組みについての説明会を開催した。

光ファイバー通信用光デバイスは、5G網の拡大や動画配信サービスの普及によるデータ通信トラフィックの急増に伴い、携帯電話基地局やデータセンターなどでの需要が拡大している。光ファイバーは、光源の点滅でデジタル信号を送信するが、このときに、高速、大容量、長距離の通信を、安定した環境で実現するために、光ファイバー通信用光デバイスが活用されている。三菱電機では、FTTH(Fiber To The Home)に加えて、ここ数年で需要が拡大しているデータセンターや移動通信システム基地局に対応した製品ラインアップを強化。「今後も、データ通信トラフィックが増加することが見込まれており、三菱電機の化合物半導体の技術を活かした高速光通信デバイスの開発を進めていく」(三菱電機 半導体・デバイス事業本部高周波光デバイス製作所 光デバイス部応用技術課長の仲井陸郎氏)と述べた。

  • 仲井陸郎氏

    三菱電機 半導体・デバイス事業本部高周波光デバイス製作所 光デバイス部応用技術課長の仲井陸郎氏

三菱電機は、1959年に兵庫県伊丹市に北伊丹工場を設立。長年に渡り、レーザーダイオードの研究開発を行ってきた。2003年に高周波光デバイス製作所に改称し、高周波デバイスと光デバイス、赤外線センサーの3つの製品群を開発、製造している。光ファイバー通信用光デバイスは、高周波光デバイス製作所の主力製品のひとつとなっている。

光ファイバー通信は、従来の電線(銅線)による通信に比べて、高速、大容量の通信が可能であり、信号の減衰が少ないため、長距離通信が可能な点が特徴となっている。そのため、動画配信やクラウドサービスなどの大容量データを扱ったり、世界中を結んだりすることが可能であり、大陸間通信や都市間通信において、20年以上前から光ファイバー通信が主役となっている。現代のネット社会には不可欠な存在といえる。

光ファイバー通信は、光源の点滅によって、デジタル信号を送信。そこで利用されるのが、光ファイバー通信用レーザーダイオードとなる。

「ファイバー通信の最も基本的な仕組みは、光源の点滅でデジタル信号を送信するものであり、光源となるレーザーダイオードをON/OFFにより点滅させることになる。だが、そのままでは光を点灯した際の強度や波長が安定するまでに時間がかかる。光の強度が安定しないと、光の波長(色)も安定しない。光が伝わる速さは、波長によって異なるため、波長が安定しないと、目的地までの到達時間が安定しないことにつながり、これが通信速度の高速化の制約となってしまう。この課題を解決するために、光の波長が安定するレーザーダイオードや、レーザーダイオードをON/OFFさせずに点滅させる技術が開発されている」(三菱電機 半導体・デバイス事業本部高周波光デバイス製作所 光デバイス部次長の奥貫雄一郎氏)とする。

  • 奥貫雄一郎氏

    三菱電機 半導体・デバイス事業本部高周波光デバイス製作所 光デバイス部次長の奥貫雄一郎氏

高速通信や長距離通信を実現するために、波長を安定化させるレーザーダイオードの技術のひとつが、DFB(Distributed FeedBack=分布帰還型)レーザーである。波長を安定させるため、レーザーダイオードのなかに「回折格子」と呼ぶ周期構造を作り、光の進行方向に沿って、屈折率の周期的な変化を与えるものだ。「波長が回折格子の周期で一意に決まり、その値からずれにくくなる。電流を増やすと光の強度が強まるため、電流を変えて、光を点滅させて信号を伝えることができる。この点滅時に波長が少し変動することになる」という。

回折格子の周期は約200nmであり、DFBレーザーを実現するには、半導体を微細に高精度で加工する技術が必要になる。そこに三菱電機の技術が活用されているという。