日本マイクロソフトは4月23日、オンラインイベント「Microsoft Education ICT教育フォーラム」を開催した。本記事ではその中から、岐阜県での取り組みを紹介する。
まずはICT環境整備と活用について、岐阜県教育委員会 教育総務課 ICT教育推進室長(所属・肩書きは2021年度現在、以下同様)の下野宗紀氏が説明した。
同県では2019年度に策定した岐阜県教育振興基本計画(通称「第3次教育ビジョン」)で、ふるさと教育の充実とICT教育環境整備と利活用の促進という2つの柱を立て、独自に県立学校のICT環境整備を始めたという。
例えば電子黒板機能付きのプロジェクタや書画カメラ、Wi-Fi環境、授業用タブレットなどを整備すると共に、現場で積極的に活用している教員に聞いた活用事例などを策定した冊子を配布したという。
2020年度には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もありオンラインの学習支援をせざるを得なくなったが、前年度の整備が生きて速やかに移れたと、下野氏は振り返る。
さらに同年度後半には、国のコロナ臨時交付金を活用して、県立高校や特別支援学校の児童・生徒、約4万2000人に1人1台タブレットを配布できたという。
2021年度は「1人1台タブレット端末活用元年」と位置付け、下野氏が室長を務めるICT教育推進室を新設した。同室には15人が所属し、学校の取り組み支援と情報発信・共有、教員向け研修の実施、「未来を創る学び」の研究と働き方改革の推進、情報基盤の整備・管理、GIGAスクール構想への対応といった5つの任務を遂行し、県内の地区ごとにICT推進主導主事を配置して、定期的に学校を訪問して各校を支援する取り組みを始めた。
実際の授業でのタブレット使用例として、下野氏はまず学習支援ソフト「MetaMoji ClassRoom」を使用した、岐阜高校でのグループ単位の探究学習を紹介した。
専門高校の例では、大垣養老高校の農業科で実習現場にタブレットを持ち出し、カメラ機能などで果樹の育成を記録し、データと組み合わせることで最適な生育環境を研究したという。
オンラインによる学習支援では、県立岐阜商業高校や大垣北高校を例に、授業をそのまま配信する形式から、教員たちの工夫により簡単なオンライン配信が可能になっていったと説明する。
さらに2021年度の重要点として下野氏は、同教委とマイクロソフト、慶應義塾大学SFC研究所の3者での、産学官による連携協定の締結を挙げる。
未来を創る学びの共同研究は、研究に熱心な教員たちを集めて慶大SFC研究所の鈴木寛教授のアドバイスを受けながら進めたが、コロナ禍のためほぼMicrosoft Teamsのみでの交流だったという。
またマイクロソフトの支援を受け、校務のデジタル化による働き方改革研究も進めたとのことだ。
さらに、県立学校におけるICTの活用事例をまとめた冊子および、MetaMojiの活用方法の研究冊子も作成したという。
最後に下野氏は、「ICT活用の底上げとさらなる授業改善を進めたい」としつつ、「未来を創る学びの共同研究の継続と、校務のデジタル化の全県下への普及が2022年度への課題だと思っています」と今後の抱負を示した。