学校現場での反応は?
気になるのが、実際の生徒たちの反応だ。この「DiscoveRe Method」事業は経済産業省の先端的教育ソフトウェア導入実証事業(EdTech導入補助金)に採択された。JAXA宇宙教育センターとの授業連携で参加する学校も含めると、公私立中学・高校15校計5000名以上が参加している。そのうちの一校、東京都国分寺市にある早稲田実業学校で中等部3年生の担任をされている玉井邦彦先生に生徒たちの様子を伺うことができた。
最初にこのプログラムの話を聞いた時の印象について、玉井先生はこう話す。「面白いと思いました。宇宙というネーミングだけで夢があるし、わくわくする。『子供たちは食いついてくるな』と」。3年生全6クラス234名が2020年10月~12月の「総合的な学習の時間」を使い、DiscoveRe Methodを導入中だ。
学校現場の教師たちは超多忙だ。その中でこのプログラムを実施することはプラスアルファになるし労力がかかるに違いない。だが「僕の信念として、何か新しいことにチャレンジする。生徒にもトライアル&エラーを求めているし、今までやったことがないことをやらなければ、何も変わらない」とプログラム導入にあたり、全クラスの先生を説得した理由を玉井先生は語る。
そもそも、今の生徒たちは「非認知スキル」という考え方になじむのだろうか? 「現場で思うのは、やっぱり『点とってなんぼ』という考え方があること。個人的にそれはよくないと思っている。このプログラムを機会に『なぜ学ぶのか』、『この先どうやって生きていくのか』を考えることがすごく重要なことだと思う」。
玉井先生に生徒の様子を聞く中で驚いたエピソードがあった。「文化祭の出し物を何にするか、クラスで話し合おうとしたら何も意見が出なかった。学級委員に聞いたら、『昨日LINEで全員にアンケートを送って、結果が出ています。クラスでみんなで話し合うのは恥ずかしいし、何を言われるかわからないから、それでいいですよね』と言われたんです。『そんなのダメだよ、議論しようぜ』と言っても、なかなかついてこない」。
現在は文部科学省が「アクティブ・ラーニング」を推進し、一方的に教師が知識を教えるのではなく、話し合って授業を進めようという方向になっている。「地理や数学でどう答えを出していくか、みんなで話し合おうという授業スタイルをとっていますが、やる子もいれば全然やらない子もいます」(玉井先生)
今時のスマホ世代だ……そんな生徒たちがDiscoveRe Methodにどう取り組んだのか。
イントロダクションの動画を見た生徒たちは「すごい面白そう!」という反応が主だったが「なんでこんなのやるんだろう」とぽかんとする生徒もいたそう。非認知スキルのチェック作業では「学校教育の弊害だと思うが『あなたがとるであろう行動を書きなさい』とあるのに『これが正解だろう』とか『これがあってるかな』と周りの子と相談してしまう。正解はなく、自分はどう思うのかを選ぶのに、『いかに点数をとるか』になってしまうんです」(玉井先生)
そんな生徒たちが、このプログラムによって、どんな変化を見せていくのだろうか。
(次回に続く)