事業成功のためのキー要因

続いて、テーマはニューノーマルの実現と生産性維持・向上に向けたKFS(事業成功のためのキー要因)に移った。

ワークスタイルに対して、COVID-19は非常に大きなインパクトを与えているとデロイトは見ているが、中でも大きなキーワードは「従業員目線、個人の目線」(小野氏)だとのことだ。

同社は、リモートワークの浸透を起点として、テクノロジーの活用による生産性・付加価値向上と従業員の働きがいを両立させる新しい働き方である「スマートワーク」が進展すると見ており、これは小野氏によると「会社視点の生産性・付加価値向上だけではなく、従業員・チームの目線で働きがいを高めること、それをテクノロジーや従業員目線での施策が支えるという形での取り組みです」という。

  • 新しい働き方となるスマートワーク

この流れはCOVID-19の拡大前から、DXの中でアジャイルスクラムやエンプロイー・エクスペリエンスなど、従業員の働きがいや多様な創造力を生かしてスピーディーに成果を出していくという形で存在していたが、今後、さらに推進されていくと小野氏は見ている。

この傾向を生産性の観点で見ると、サステイナブルな生産性の向上を考える時に、従業員の働きがいに着目すべきであり、それを支えるITリテラシーが、業務量・コスト、成果、働きがいという3つの要素に大きく関連してくると、小野氏は指摘する。

  • 生産性の3要素とデジタル技術の貢献

リモートワークの進展により、高付加価値業務にあてる時間の増加や時間・場所に縛られない働き方が可能になるといったメリットの一方で、オン・オフの境目が無くなり働き過ぎてしまう、あるいは孤独感が増加するといったデメリットもあるという。

  • リモートワークの特徴と生産性維持・向上に向けたKSF

こうしたメリット・デメリットについて小野氏は、「企業の人材マネジメントとしては、そのプラスをさらに促進、少なくとも維持し、そしてマイナスをできるだけ抑えてニュートラルに持って行くという観点での、ワークスタイルの全般的な設計が必要になると考えています」と語った。

ニューノーマル時代の働き方を実現する課題

ニューノーマル時代の働き方を実現する課題に関して、小野氏は働き方、ツール・インフラ、業務・組織、タレント・カルチャー、労務・制度の5つの観点から分析したマップを提示した。

  • ニューノーマルな働き方実現への課題マップ

働き方については、コミュニケーションをよりガイドライン化するなどしてみんなで意識をそろえること、デイリースクラムなどの育成観点でのミーティングを高頻度・短サイクルで実施すること、さらにこれらを支えるチャットツールやマネジメントツールの導入が鍵になると小野氏は指摘する。

業務の効率化については、例えば紙やハンコを使う業務をスマートワーク化できるインフラの整備などから着手し、その後で具体的な制度化・仕組み化に着手していくという流れが考えられるのではないかと提案した上で、「それを、まずは全体的なデザインしていくというのが非常に大きなポイントかと思います」と小野氏はこのテーマをしめくくった。