重力はつらいよ
矢野:もう一つ質問があります。元来健康であるというのが、宇宙に行くときの必須条件ですよね。何をもって健康とするのでしょう。
金井:その基準は専門家の間でも激しい議論があるところです。民間宇宙船が軌道に乗ったら宇宙旅行客をISSに送り込もうとしていますが、プロの宇宙飛行士と同じ医学基準だとしたら厳しすぎるのではないか、などの議論が始まっています。宇宙旅行客にはたとえ持病を持っていても、宇宙を楽しんでほしいですよね。とは言え、緊急事態に宇宙で命を落とすような重い病気だったら困るし、どの辺で線引きするかは難しいですね。
矢野:金井さんが身体の変化について、宇宙と地上で違うなと思ったことはありましたか?
金井:宇宙だと身体は楽ですね~
矢野:あぁ、そう!
金井:地球上の1Gは常に身体に負担がかかっている状態です。宇宙にいる間はそれがなくなるので、超楽。疲れない、よく眠れる。疲れてもすぐに回復する
矢野:いいねぇ!!
金井:上半身に血液などの体液がシフトして顔がふっくらするから皺はなくなるし、硬かった足の裏もしばらくたつと、赤ちゃんみたいな柔らかいお肌になるんです。地上に戻ってきた後は、めまいはするし身体は重いし、すぐ疲れる。宇宙で筋トレを毎日やっていた宇宙飛行士でも「重力は辛いなぁ」と言います。
宇宙に行って感じた身体の変化
矢野:視力が宇宙で変化すると聞きますけど、金井さんは目は大丈夫でしたか?
金井:宇宙では眼球が扁平化し、相対的に縦長になって、遠視や老眼になりやすいと言われています。遠くは見えるが近くが見えにくくなると。でも私は大丈夫でした。
矢野:私は生まれつき目が悪いので、これ以上眼球が潰れたらどうなるんだろうと思いますが。他に何か身体に異変は?
金井:体が硬くなります。地上だと物を取る時に腰を曲げるじゃないですか。宇宙では身体や足を曲げる必要がなくて関節を使わなくなるんです。帰ってきてすぐは靴ひもを結ぶのも一苦労で、前屈しても足に届かない。一生懸命曲げないと…
矢野:宇宙ではストレッチができないんですね。ところで、今は訓練と広報活動もなさっていますよね。私は、宇宙の魅力を女性を含むたくさんの人たちに、ぜひ知って欲しいなと思っていて、どうやって伝えたらいいんだろうと考えているんです。