基調講演の後半は、3社のユーザー企業と2社のパートナー企業が最新事例について講演を行った。
トヨタ自動車 コーポレートIT部長の中野巌氏は「トヨタ販売店におけるデジタル変革」について説明した。
「新たなスコアリングの仕組みを販売店に導入したことで、ファネルが太くなった。また、顧客の情報に市場調査データを組み合わせ、AIを活用することで、車歴からユーザーに喜んでもらえる車種を導き出せるようになってきた。Oracle Cloudを活用してフロントのデータとオンプレミスを連携することができている。デジタル変革においては、プロセス変革型に加え、ITドリブン、アジャイル運営、ビッグデータの補填など、デジタル変革型施策で推進することが必要である。そして、この活動において最も重要なのは楽しむことである」
続いて、西日本電信電話 アライアンス営業本部ビジネスデザイン部長の猪倉稔正氏が、「社会課題に向けた取り組み~ソーシャルICTパイオニアを目指して」と題して、認知症対策への取り組みについて説明した。
「NTT西日本は、福岡県大牟田市と地域密着型リビングラボとの共同実験を進めており、パーソンセンタードデサインにより、生活者との対話を通じたPoCのほか、早期にMCIを検知する予防策にも取り組んでいる。Oracle Cloudによって、ライフログをもとにAIで分析して早期に検知する仕組みを、開発している。Oracle Cloudを導入したことで、柔軟性を実現するとともに、開発をスピーディーに回すことが可能になった」と語った。
リコーITソリューションズ 代表取締役社長執行役員の石野普之氏は、「デジタルワールドへの挑戦」と題して講演を行った。
「複写機市場は踊り場に来ている。だが、それをネガティブには捉えていない。踊り場は次のジャンプに向けた時期であり、それに向けた準備をする必要がある」と前置きし、「リコーは、EMPOWERING DIGITAL WORKPLACEによって、オフィスだけでなく、さまざまな場所で働くことを支援するため、複写機がクラウドとシームレスにつなげ、オープンイノベーションによって迅速にソリューションを提供していく。複写機が大きく変わる中で、トライ&エラーを素早く繰り返しながら、自社のビジネスモデルを変革させなくてはならない。そこには、デジタルビシネスのセオリーとアジリティ、セキュリティが重要であり、アジリティにおいてクラウドが重要な手段となる。Oracle Cloud Infrastructureに関する機能要件やコスト評価を行い、5月の東京データセンターを専用線でつないで、評価を行った。期待以上の成果が出た。今後はAutonomous Databaseにも期待したい」
パートナー企業としては、「エンタープライズシテスムのクラウドシフト」と題して、エヌ・ティ・ティ・データ 取締役常務執行役員の木谷強氏が最初に講演した。
「クラウドに移行しても『コストが下がらない』『複雑性があり』『クラウドに移行できない』といった声がある。実際、われわれの顧客を見ると、クラウド活用比率は5%にとどまる。日本オラクルとは100億円以上のビジネスをしており、今後、これらの顧客がクラウドに移行することになる。だが、要件が厳しいデータベースは、クラウドシフトの障壁になる可能性が高い」と指摘する一方、「ExaDataをオンプレミスで利用しているある金融機関では、クラウド移行に関して厳しい要件を出してきたが、東京リージョンの卓上評価と海外リージョンの実機評価では、Oracle Cloudで非機能要求充足性を確認できた」と語った。
最後に、「Oracle Cloud Infrastructureへの期待」と題して、野村総合研究所 常務執行役員 マルチクラウドインテグレーション事業本部長の竹本具城氏が講演した。
「金融機関でもクラウドファーストが定着してきているが、日本の企業の基幹システムのクラウドシフトはこれからが本番になる。われわれは、オラクルと長年にわたるパートナーシップを組んでいる。その中で、次のステップとして、金融機関へのOracle Cloud Infrastructureの納入を図ろうとしており、データベース領域に対して期待をしている。すでに北米のサイトを利用した検証を続けており、技術者の育成にも力を注いでいる。Oracle Cloud Infrastructureは、日本の金融機関にも役に立つものと考えている」