ベンチャーエリアではフランス企業が存在感を発揮

ほとんどの時間を自分のブースでの製品説明やあらかじめ約束されていた打ち合わせに費やしたため、メイン会場であるラスベガス・コンベンション・センターを訪れる機会は得られませんでした。

私たちのブースがあったSands Expoという会場はどちらかといえば、大企業よりもベンチャー企業の方が主役です。1階のEurekaparkという一角には各国のベンチャーが集まり、施設内でも活気に溢れるエリアとなっています。出展者の半分以上はフランスが占めいて、勢いを感じました。彼らは小型で小洒落たIoTデバイスを得意としていました。プロダクトもIoTホームデバイス、ロボット、ウェアラブル、ヘルスケア、VR/AR、ドローンからバッテリー、セルカ棒までなど多岐に渡り、激しい競争が繰り広げられていました。

我々のブースの近くにはCES Asiaで非常に注目を浴びたガジェットが展示されていましたが、ラスベガスでは存在感を発揮できていませんでした。ブースの派手さ、ディスプレイの洗練さ、プロダクトの新しさ、格好良さの総てが揃っていたとしても、広大で会場も分散した巨大な見本市の中では埋没しかねない競争の厳しさを感じました。

個別のプロダクトで、特に多数の来場者の視線を集めていたのは、LEDのついたプロペラを高速回転させて映像を立体的に見せるkino-mo社の立体ホログラムHypervisionです。個人的に最も興味を惹かれたのは、sevenhugs社のスマートリモートコントロールでした。これはテレビ、スピーカー、エアコンなどおよそ25000種類もの室内の家電製品を1つのコントローラーで操作することを可能とするハンドサイズのデバイスです。UI/UXデザインの洗練さ、説明の簡潔明瞭さ、動作センサーの正確さなど見るべき点は多くありました。

ずらりと並ぶフランスのスタートアップ

PLENGoer RoboticsのCESはまだ終わらない

参加してみてよくわかったのは、CES出展の成否はほぼすべて事前の準備で決まる、ということです。来場者達は歩き回って面白いものを見つけてSNSでシェアするような若者達ではなく、あらかじめターゲットを絞ってやってくるプロのバイヤーです。ブースでじっと待っていても偶然に幸運が訪れることはありません。私たちの主な成果は2つの重要な提携交渉が出来たことと、思わぬ有力な企業のトップがわざわざ私たちの製品を見に来てくれたことです。これらはすべて事前にアポイントメントが入っていたものです。出展者には10人分の招待枠があります。また出展にエントリーをするとブース来訪を希望する会社からのコンタクトが担当者に届きます。出展内容を告知し、招待し、約束を取り付けるという事前の作業があって初めてこれらのことが実現しました。

CESは決してベンチャーに優しい場所でもありません。出展費用は私たちの3m×3mの小さなブースだけで6000ドル。スタッフの渡航費も加えると資金力の乏しいベンチャーには極めて大きな負担となります。メディア向けの限定イベント、アワードへのエントリーもすべて別料金で我々には支払えませんでした。

4日間の奮闘の結果、集まった連絡先の数はおよそ150に達しました。これらの相手にコツコツと開発の状況をアップデートし、次の展開につなげることができれば、それでやっと私たちにとっての、CES2017が一区切りつくことになります。

出口では来年のブースを予約する企業の列が見えました。私たちはこれからKickstarterのキャンペーン、量産設計、出荷、販売などPLEN CUBEの商品化へ向けて進んでいきます。やるべきことはたくさんあります。しかし強いチームは1年先のビジョンを持っていることを実感させてくれた光景でした。目先のことだけやっていてはダメだ。私たち一同は、部屋に戻ったら中長期的な展望をまとめようと思いながら会場を後にしました。

CES 2017最終日の風景。多くの出展者にとってCES 2018はすでに始まっている

著者紹介

PLENGoer Robotics
日本で小型ロボットを開発してきたプレンプロジェクトと、中国のGoerTek社によるジョイントベンチャー。プレンプロジェクトがロボットの開発、GoreTekが製造を担当し、これまでにない、実用的で人々の生活を効率化する家庭用および個人用サービスロボットの提供を目指している。2016年3月設立。