一難去ってまた一難…試作品が持ち込めない!?
CES 2017は2017年1月5日から8日までの4日間、米国ネバダ州ラスベガスで開催されました。主催者の発表によると出展企業は世界中から約3800社以上、来場者数は17万5000人にのぼる世界最大級の家電の見本市です。私たちの出展は決してスムーズなものではありませんでした。まず試作品のデザイン、機能の開発の目処がついたのは2016年10月でした。1年前からブースの確保が始まるCESではかなりの出遅れです。慌ててブースの予約に奔走し、たどりついた海外の代理店のおかげでなんとか滑り込みで確保できた場所は、メインではないSands Expo会場のかなり奥のGlobal Technologyというコーナーの片隅でした。
米国入国の際は、荷物が通関を通らないというトラブルに見舞われました。これは手荷物と一緒に運んできた試作品が申告のなされていない販売品との疑いをかけられたためです。「最悪のケースで試作品を破壊されることもある」と聞き、一同の顔が青ざめる事態となりました。
試作品も年末年始を返上して、アセンブルの作業に取り組みましたが、CES初日の朝もなお作業が続いている状態です。さらには、展示品を並べ終わったところで、隣のブースの過負荷により電源が落ちて、PLEN CUBEを動かすことができなくなるというトラブルもありました。ただただ、頭を抱えて「世の中には上り坂、下り坂、そしてまさかという坂がある」という言葉を反芻しました。
「売れる商品」を探すベテランバイヤー達
次々と訪れるトラブルをなんとか処理し、やっと来訪者への対応が始まりました。CESの来場者は身につけるバッヂによりバイヤー、出展者、メディア、一般参加者などその属性がわかるようになっています。その中で最も目立つのが5年、10年、さらには20年、30年連続参加のバッヂを付けたベテランのバイヤー達です。彼らの多くは世界から集まったプロフェッショナルです。彼らはあまり笑顔を見せることもなく、黙って出展者の話に耳を傾け、興味を持てば名刺を交換して、また次のブースに向かっていきます。
「君たちはロボットを作っているのか?」と鋭い目つきのバイヤーが声をかけてきました。そのバイヤーはいきなり「実は俺はロボットなんだ」と言い出します。何を言いに来たのかわかりませんでした。「女房がスイッチを入れると動き出すんだ。」ウィンクするのを見て、初めて彼が冗談を言ったのだと気がつきました。
バイヤー達の質問は、主に商品の出荷可能性の有無と時期、そして小売価格についてでした。私たちのPLEN CUBEは試作段階であることを告げると多くのバイヤーはみるみる興味を減退させていくのが感じられました。彼らにとってCESは、あくまで商談の場であり、すぐにでも取り扱い可能な商材を探しにラスベガスを訪れているのです。しかし、来月にもKickstarterのキャンペーンを予定していると言うと、急に表情を変え、名刺交換を申し出るバイヤーも数多くいました。「君たちのロボットは実にCUTEだ。売れる商材になると思う。Kickstarterキャンペーンの行方を見守っているよ。名刺をくれないか?」ブースを訪れた多くの人々が、PLEN CUBEの持つユニークな動作に興味を持ってくれたのは、嬉しいことでした。技術的な質問については、通信能力、スピーチエンジンの種類(というよりAlexaか否か)、センサーの認識から動作を始めるまでのラグに関するものが目立ちました。ただ、正直なところ、予想していたほどには来場者は技術に造詣が深くはなかったと感じました。
著者紹介
PLENGoer Robotics
日本で小型ロボットを開発してきたプレンプロジェクトと、中国のGoerTek社によるジョイントベンチャー。プレンプロジェクトがロボットの開発、GoreTekが製造を担当し、これまでにない、実用的で人々の生活を効率化する家庭用および個人用サービスロボットの提供を目指している。2016年3月設立。