文化情報プラットフォーム実現にまつわる談義
その後3名によるトークセッションとなった。まず青柳氏が「関係者しか見ていなかったデータをプラットフォームに入れればかなりのデータがあるので、大学に声をかけるべきでは?」と発言。これに対しては坂村氏も竹内氏も賛同しており、竹内氏は「新しい研究者が出かけて、地元情報を編纂するのに価値がある」、「最近、面白いことは教育制度の外にあり、特にLT(ライトニングトーク)は5分でこんな事が言えるのかと感じた」と所感を語った。
また、坂村氏から竹内氏への「パリでも漫画には興味があるのでは?」という問いかけに対し、竹内氏は「5年で結構変わってきて、漫画が文化の発信力として大きくなった」と回答。また、青柳氏は「かつての鴎外とかに匹敵する文化人は漫画家だろう」と発言。漫画『神の雫』がフランスでも取り上げられ、(それまで減少傾向だった)ワインの消費が伸びた事や、前回の東京オリンピック開催を決める際、ICOは三井倶楽部で会合を開き、会長が「47年ものの『シャトー・ディケム』」を注文し、スーっと出してきたというワインにまつわるエピソードを紹介。竹内氏は「一言が致命的な力を持っている。文化情報にそういうストーリーがあって、バシッと決めると、ガラッと変わる」と力説した。
今回の文化情報プラットフォームに関しては、青柳氏がグループ化した文化遺産でストーリーを作っていることを紹介。これに対して坂村氏が「そのために文化情報プラットフォームの大量のデータから、AIが何かを見つけてくる可能性が出てきた」と発言し、引き続き昨今の故障予知システムに言及。従来必要ないと思っていたところにもセンサーを付ける事で、故障の分析に役立っている例を紹介していた。
大学生など「センサーとなる人」へ期待
一方、竹内氏は「文化センサーを誰がやるのか?青柳さんのような人は多くない」と指摘。これに対して坂村氏は「町の神社とかの古文書を見ると『〇年前に誰それが通った』のような情報があり、複数の神社の古文書を突き合せれば関連性が見えてくる」と語り、青柳氏はグラスゴー大学の学生がデータを集めていた事例を挙げた。「(日本にも)800とか900の大学があるから、そこがセンサーになってほしい」と返したところ、竹内氏は「(調査活動を)単位にして、指導教授も認めるといけるだろう」と賛同していた。
坂村氏は「データを20万件集めるのはどうすればいいかと思っていたが、博物館、美術館、企業博物館と都道府県は協力してくれると思っていたが、これに大学と留学生が使えそうだ」とまとめ、青柳氏は「前の東京オリンピックの時は市川崑が記録映画を作り、札幌オリンピックの時は篠田正浩が記録映画を作ったが、今度の東京オリンピックではいろんな人が撮った写真をアーカイブして映像化すべき」と今度のオリンピックに向けた文化庁プラットフォームの先を提言し、場を締めくくった。