そんな黒飛氏は、コンテンツの権利者が自らオウンドメディアを持つことの利点も力説する。

「一般的にインターネットは新聞やテレビに比べて広告の出稿先のコントロールが難しく、意図しないサイトや場所に掲載されることもしばしばです。また、競合排除も難しいため、ブランドを意識する企業ほど広告を出しづらい状況にあります。

しかし、オウンドメディアであればそのような懸念もなく、ブランドを気にする大手のクライアントにとって望ましい広告商品になり得ます。

しかも、高校野球は単なるスポーツの一大会ではなく、国民行事といっても過言ではないほどの熱量があります。権利を第三者に渡して使用料を得るのではなく、自分たちで権利を活用して野球を普及させるためにビジネスモデルを作っていくべきでしょう」

スポーツのネット配信では権利問題が障壁となってサービスに制約が課され、その隙を突く形で私的に録画した映像を用いた違法なコンテンツが動画共有サイトに蔓延することも多い。

そんな中、権利をすべてクリアにし、かつライトなファンからコアなユーザまでをも納得させる付加価値を用意するなど、権利者自身でもここまでできることを示した事例として、このサイトの意義は大きい。

日経BP社が選ぶ「ソーシャルテレビ・アワード 2015」でサイトが大賞を受賞したのも、こうした取り組みが業界の内外から高く評価されたからにほかならない。

スポーツ界は2020年の東京五輪開催に向け、これからさらなる盛り上がりを迎えることが確実視されている。サイトと、それを手掛けたリムレット社の存在が知れ渡るにつれ、同社のもとにはほかのスポーツ関連事業者からもさまざまな問い合わせが寄せられているとのことだが、それも納得だ。今回の「バーチャル高校野球」、大会終了後の8月末でいったん終了予定とのことだが、サイトの次年度以降の動向とともに、同社のこれからの動きも目が離せそうにない。