今回の展示に関して舘博士は、「3Dは既存のメディアで伝えることがなかなか難しいですし、触覚になるともはやその感覚は伝えようがありません。百聞は一見にしかずといいますが、一体験は百見に等しいので、ぜひ未来館に来てもらって、直接感じていただきたいと思います。これらのものが新しい世界を拓いていくとすると、1人でも多くの人に体験していただくことが重要になります。体験してもらった方々がどんな反応をするかで、我々の研究の方針なども変わっていく可能性があります。そうした点からもメディアラボには期待しています」とコメント。そして南澤准教授は、「ずっと触覚の研究をしてきまして、この触覚の楽しさというものを大勢の方に感じてもらいたいなと思っています」とした。

ゲームを含めたテレビなどの既存メディアは、長いこと視聴覚のみが用いられてきて(ゲームは一部振動感覚を利用しているが)、ある意味、「マンネリ化」というか、「飽きられてきた」といえなくもない状況である。解像度を上げることで映像のクォリティを上げるという方向の研究は、ご存じの通り、4K、8Kといった形で2020年の東京オリンピックのタイミングを目指して研究開発がどんどん進められている。確かに4Kの映像クォリティはすごいものがあり、1度慣れてしまったら、今のフルHD程度の画像が味気なく見えてしまうことだろう。

しかし、どれだけ視聴覚の技術が進歩したとしても、触覚はもちろん、味覚、嗅覚といった残りの三感は実際に感じることはできず、あくまでも視聴者にイメージさせることしかできない。誰だって、料理やスイーツなどが紹介されるような番組を観ていて、味わってみたり香りをかいでみたりしたいと思ったことはあるだろう。触覚に関しても、夏の暑い盛りだったらマリンブルーの海で泳ぐ心地よさとか、ゴージャスなベッドに横たわるフカフカ感とか、インターネット通販で衣服を購入する際に触り心地を確かめて見たいとか、いろいろあるはずである。

そろそろ五感の内のメディアとしてまだあまり使われていない触覚、そして一部で研究されているだけの嗅覚や味覚なども、新しいメディアとして活用できるようになってほしいのが、大なり小なり誰もが持ち始めている時期ではないだろうか。今回はそうした中で触覚に関してはそれを記録し、伝送し、提示するといったことが可能になっていることがわかってもらえるはずで、大げさないい方をすれば、新たなメディアの息吹を感じられるはずだ。

メディアラボ第14期は、日本のVR研究を切り拓いてきた生ける伝説である舘博士と、その直系の教え子である南澤准教授の師弟タッグによるコンテンツは老若男女関係なく楽しむことが可能だ。ぜひ、「触感」という新しいメディアの可能性を感じられるの世界を体験してみてほしい。