早速、造形開始! 象の人形編
さて、そんなこんなで自宅に設置された「MakerBot Replicator Mini」だが、これをどう使うかが今回の本題だ。まずは3DCADで3Dデータでも作ってみよう……なんて、どこかで見たような流れにはならない。今回は3DCADをまったく触らずに、遊んでしまうことにする。
というのも、「MakerBot Replicator」シリーズには強い味方がいる。それが「Thingiverse」(シンギバース)という世界最大規模の3Dプリントデザイン・コミュニティだ。2014年9月現在、21万8千件以上の3Dデータが投稿されており、そのすべてが無料という宝の山である。
ここに投稿されているデータはSTL形式の一般的な3Dデータだが、うれしいのは「Thingiverse」と「MakerBot Replicator」の親和性だ。セットアップの過程で「MakerBot Desktop」というソフトをインストールするのだが、実はこのソフトから直接「Thingiverse」のデータを検索することができる。さらに使いたいデータを見つけたら、「Prepare(準備)」ボタンを押すだけで取り込まれ、あとは「Print(プリント)」ボタンを押すだけで造型がスタートするのだ。
3Dプリンタは3Dデータがなければただの箱だ。しかし「Thingiverse」には、ちょっとした小物からロボットの部品まで、さまざまなデータが投稿されている。そこで、まず最初にプリントしてみたのは、ストラタシス社公認データだという、象の人形だ。
スイッチを入れ、準備ができると「ピロリロ~♪」と明るい電子音が流れる。準備OKのサインなのだが、無機質なブザー音でないのは、楽しげな使用感を演出するためだそうだ。確かに、PCから指示を送ると、動作の所々でまた違った電子音が流れるので、まるでコミュニケーションを取っているような気分になった。あとはデータを読み込んで、「Print」ボタンをクリック。これでもう自分にできることは「待っているだけ」だ。次にプリントするデータを探しながら待ってもいいし、部屋を離れても構わない。
そうはいっても進行状況が気になるという人のために、筐体内にはカメラが設置されている。専用アプリをインストールすれば、iPadやアンドロイド携帯からこのカメラで造形中の映像を見ることができる。ただ「MakerBot Replicator Mini」が接続されたPCと、同じネットワーク内でなければ見られないため、友人に見せたい場合は、造形中のデータをSNSに投稿するのがいいだろう。
気になる点があるとすれば、作動音の大きさだ。ほかの作業をしている間にも、知らぬ間に"小人さん"がこつこつと造形してくれるかのようだが、寝ている横で動作させる場合は、モーターの駆動音が気になるかもしれない。とはいえ、寝室に3Dプリンタを置く人は少ないと思うので、実質的には問題にならないだろう。
象はこんな形で完成する(下の写真参照)。象とビルドプレートの間に広がる部分は、造型を安定させるためのサポート材である。これをはがせば、象の完成だ。
ちなみにこの象、一体成形されているように見えるが、内部構造を作ることができる3Dプリンタの利点を最大限に活かしている。プリントされた直後は両脚を前後に投げ出している姿勢なのだが、脚をたたむ方向に力を加えると、軽い手応えとともに脚がそろって動き、象を立たせることができるようになるのだ。削り出しの工作機械では不可能な、プリントしただけで動かせる人形なのである。