泡盛を取り扱う「古酒家(クースヤ)」松尾店。ここは、マコト・オリジナル・グッズが運営しており、系列店が沖縄県内に8店舗ある。
同社の営業部長で、IT事業部広報の平野 晃央氏は、従来型のPOSシステムから新たに「クラウド上でPOSデータの管理をしたい」という希望を持っていた。ただし、1、2店舗の小規模な個人商店とは違い、中規模チェーン展開である古酒家では「システム的に上手く行くかどうか気になった」と平野氏。ただ、導入を決めて実際に運用していることから、特に問題は生じていないようだ。
一方で、平野氏は少なからず不満を抱いている部分もあるようで「ドロワーやバーコードスキャンの取り扱いが難点。また、せっかくクラウドにデータを置いているのであれば、ECサイトとの連携もできると嬉しい」と、リクルート側に直接「お願い」をする場面も。
観光O2O施策としては、このゴールデンウィークから始まったこともあり、まだそこまで成果は出ていないという。
「1日1、2人程度であれば来る感じ。ポイントはまだキャンペーン分しか使われていないけど、8月末までの期間で見ないとわからない」(平野氏)
最後にAirレジを導入して感じた点については「店員の配置が変わるかも」と一言。真意は「店舗内でレジを固定する必要がなくなる」という点。
「iPadさえあればいいわけで、店員がそれぞれiPadを持ち歩き、お客さんに声をかけられたらそこで会計を行なう。そういうスタイルができれば面白いかも」と、平野氏が思い描くiPadを利用したPOSレジの将来像を語っていた。
お客さんに驚かれたiPadのレジ
もう1件訪れたのは、かりゆしウェアの販売を行なっているALOHA SHOP「PAIKAJI」。店員の新見 碧さんはAirレジに帯する印象を「便利」と語る。
「タブレット端末のタッチパネル操作は慣れているし、(AirレジのPOSアプリUIが)簡単で便利だと思った。このレジを取り出すと、お客さんに驚かれた。既存顧客のデータベースが、これまで使用していたPOSレジに入っているので、そちらも使っているが、AirレジはSquare連携があるので、決済手数料のメリットを考えて、クレジットカードを利用する方の場合にはAirウォレットを利用していない方でもAirレジで決済している」(新見さん)
こちらの店舗でも、1日1、2名とのことで、扱っている商品を考えると、古酒家よりも相対的に多いように思える。商品価格帯が1~2万円であるため、もしかすると、県の観光政策課・山川氏が語っていた「ポイントを利用する場合には、消費額が上昇する」という成果が上がっているのかもしれない。
質の高いものを提供して、消費額の向上目指す
こうしたITの利活用は、どこまで推し進めることが"最適な策"なのか。
琉球大学観光産業科学の教授である下地 芳郎氏は「ITそのものは手段でありツールにとどめるべき」と観光における活用方法を分析する。
「発信すべきはコンテンツであり、ITツールの先にいる人を見据えた発信が出来なければ、来てほしい対象となる人に届くのか? となってしまう。彼らが全員情報を受け取っているかというと、(心に)刺さるものしか受け取らない。爆発的に情報量が増えている現状を踏まえないといけない」(下地氏)
利便性ばかりを追求しがちであるとIT利活用、とりわけWebを活用したプロモーションに警鐘を鳴らす下地氏だが、その他の面では、1人あたり消費額が減少していることを例に取り、IT利活用の別の側面を活用すべきとした。
「観光客が買いたいと思うタイミングで買う物がなかった。大規模なお土産屋でちんすこうだけを買えば良いという人ばかりではない現実がある。観光消費額を高めるために、そして、機会損失を生まないために(Airレジなどの簡易POSシステムといった)IT利活用は進めることが大事だろう」(下地氏)
下地氏の「ちんすこうだけを買えば良いという人ばかりではない」という言葉の裏には、先ほどのかりゆしウェア「PAIKAJI」のような沖縄ならではの、そして質が高く、商品単価の高い製品を観光客に購入してもらうことで、消費額の上積みを目指すという目的がある。
「かりゆしウェアを安く買うのではなく、良いものほしいという方向に持っていきたい。もちろん、安い物を求める人もいるし、質に幅を持たせることは良いと思う。ハイクオリティなものから、安価な商品まで、さまざまな商品開発に繋がるようになっていくといい。単なる観光O2O施策だけにとどまらず、高いものの良さを理解してもらい、買ってもらえる手段になってくれれば」(下地氏)