沖縄の玄関口である「那覇空港」の観光施策はどうなっているのか。空港の販売店を一部管理しているエアポートトレーディングの代表取締役社長である丸橋 弘和氏に話をうかがった。
同社は、2013年4月に那覇空港のビル会社から独立。那覇空港に出店している土産物店の約1/4を管理している。丸橋氏は、空港の現状として、観光客から「どの店行っても同じものしかないね」と言われていることを嘆く。
これは、県観光政策課の山川氏も口にしていた「お土産のレパートリーの少なさ」によるもので、丸橋氏は明確に「スタープレイヤーが少なく、他に売れている物がない」と話す。
丸橋氏は、現状を打開するため、従業員と共に北海道の新千歳空港や羽田空港へおもむき、物販店がどのように販売戦略を練っているか"敵情視察"を行なった。
「そういった研修を通して感じたことは、やはりよそと比較してどの店舗も同じ物しか売っていないということ。他の空港では、店舗同士が役割分担のように別の物を売っているが、うちでは同じものばかりで沖縄の魅力を打ち出せていなかったのではないか」(丸橋氏)
例えば沖縄では、ゴーヤが有名だが、土産物屋では意外と目に付かない。これは、言い製品を大量に作り出す生産工場の環境整備が出来ていないことや、スイーツ系の生菓子を作るにしても、賞味期限が短く在庫リスクが高いため、なかなか一歩を踏み出すことができないと丸橋氏は語る。
「『これだ!』と思うようなプライベート商品を作るリスクを取る戦略が必要だと感じた。言わば、ヒットを打ちながらもホームランを打てるようにしていけるのが理想だ」というが、実際に「美ら海の防人カレー」や泡盛ブランドを展開することで、独自色を打ち出そうとしている。滑り出しは上々で、徐々に売れ行きが伸びていると言うが、それでも大きくブランドを構築するためには別のアプローチが必要だという。
「理想的には、産学連携を是非ともやっていきたい。役所含めて地元が一つになり、新たなお土産を作らないと、(観光の街として)先々厳しくなるのではないか」と丸橋氏。那覇空港は現在、新千歳空港の1/2の売り上げで、伊丹空港や福岡空港にも及ばない状況だ。化粧品も売り上げ上位にランクインしている状況だが、化粧品は沖縄のものではなく、地元ならではのものの開発は急務と言えるだろう。
Airレジ導入の効果とは
名産品の創出は地場企業の課題であるが、その一方でいち企業としては業務効率化が常に求められる。この4月、リクルートが沖縄で観光O2O施策を開始したが、それにあわせてエアポートトレーディングはAirレジを導入した。
Airレジは、iPadを活用した簡易POSシステムだが、エアポートトレーディングはすでに別のiPad活用型POSシステムを導入していたという。
「リクルートさんがもっと早くお話しをくださっていたら良かったのに(笑)」と苦笑いをした丸橋氏だが、iPadのPOSシステムは、コストパフォーマンスの面で非常に有効だと太鼓判を押す。
「これまで利用していたPOSシステムの更新が来ていたが、それを更新するとかなり大きな額の更新費用がかかる計算だった。そのお金を出すのであれば、レジを変えれば良いという話でiPadの導入に至った」(丸橋氏)
また、Airレジの前に導入したPOSシステムと異なり、AirレジはSquare連携によって決済手数料が抑えられるメリットがあると強調する。
「クレジットカードの手数料がかからないのはありがたい話。お土産屋によっては、クレジットカードの利用をお断りして現金でというケースも存在するが、それがない。リクルートさんは、他の領域で勝負できるノウハウをお持ちなので、イノベーションを起こして手数料無しの世界を作ってほしい(笑)」(丸橋氏)
実証実験では、Airレジの導入だけでなく、Airレジ導入店舗で使える「リクルートポイント」が貯められる「Airウォレット」アプリの活用も行なわれている。これは、観光地に着いたリクルートポイント保有者に対して、リクルートが1000ポイントを付与。ポイントプログラムを通してAirレジ導入店舗への送客を行なうというものだ。
「私たちの店舗では、現金以外の利用者のうち、クレジットが8割で電子マネー2割。電子マネーの半数がEdyで、WAONとSUGOCA(関東圏ではSuica)が残りを分け合う形になっていた。リクルートポイントの利用者は、那覇空港で導入キャンペーンをやっていることもあってかSUGOCAレベルまで利用者が増えている。このアプリは、利用者の属性などもある。購買のデータ管理や情報収集とあわせてマーケティングの指標を作れるはず。リクルートさんはそういうことが得意だからデータを、沖縄のために使っていただければと思います」(丸橋氏)
リクルートポイントは、4月30日にPontaポイントへの統合を発表したが、これによって、ますますポイントプログラムの送客効果に期待が持てる。空港外における送客効果はどうなのか、那覇市にある国際通り商店街の2店舗に話を聞いた。