実技競技1「ポリペプチド」

最初の実技競技は生物分野からの出題となる。アミノ酸を調べる2つの課題が用意されていた。

まずは課題1から説明しよう。課題1では、試料に溶けているアミノ酸が何か、「薄層クロマトグラフィー」という手法を用いて調べる。候補として、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、メチオニンといった5種類のアミノ酸があげられており、実験により、この中の1つに特定する。

薄層クロマトグラフィーの実験。中に5×10cmのプレートが入っている

プレートを展開液に浸すと、展開液はじわじわと上に滲んでいく

シリカゲルを薄く塗ったプレートの一端を展開液に浸すと、展開液はシリカゲルに浸透して上方に移動していく。このとき、プレートの1点にアミノ酸の試料を付着しておくと、展開液の進行とともに移動するのだが、移動速度は展開液よりは遅い。両者の移動距離の比率(Rf値)はアミノ酸によって異なるため、この数値を調べることで、アミノ酸を特定できるわけだ。これが薄層クロマトグラフィーである。

実験の手順は問題に記載されており、基本的には、その指示通りにやれば答えを導き出せるようになっているが、指示の意図を読み取り、正確に作業する能力が鍵になる。例えば、試料は「できるだけ小さなスポット状に」付着させるよう指示されているが、具体的に何mmとか数字は出ていない。スポットが大きいと広がって良く分からなくなってしまうためだが、こういった1つ1つの手順にも工夫が求められる。

かなりの難問だったのが課題2だ。この課題では、ポリペプチドを構成するアミノ酸の配列を調べる。未知のペプチド「X」のアミノ酸の数は21個で、どのアミノ酸が何個含まれているかという情報は与えられているが、並びの順番が不明。このペプチドXを、6種類の酵素を使って切断していき、その結果から、構成するアミノ酸の順番を特定するのが目的だ。まるでパズルのようでもある。

ペプチドXの配列を調べる。AとかCとかはアミノ酸の種類を表す記号だ

酵素はこの6種類。どの場所を切断できるかは、酵素ごとに決まっている

課題1とは異なり、課題2はいわゆる"ドライラボ"、つまり本当の実験を行わない模擬実験である。ペプチドと酵素の組み合わせ(23×6)がマス目状に並んだ「マトリックスシート」が配られており、マス目に貼られている目隠し用のシールを剥がすと、そのペプチドに酵素を加えた実験結果が出てくるという仕掛け。シールを剥がすと、その実験をやったということになるわけだ。

横軸に酵素(6種類)、縦軸にペプチド(23種類)が並んだマトリックスシート

シールを剥がすと実験の結果が出てくる。7つのペプチドが生成されたようだ

当然、実験をたくさんするほど、ペプチドXの構成を決定しやすくなるのだが、実験の回数だけ減点されるため、なるべく無駄な実験は避けなければならない。最短ではたった5回で決定することができるそうなので、興味があれば問題をダウンロードして、やってみてはいかがだろうか。

なお実技競技1では、弘学館高等学校(佐賀)が1位となった。