クラウド基盤の特徴と機能
これらの課題を解決するインフラが、「クラウド基盤」だ。
クラウド基盤とは、統合化されたハードウェア基盤からリソースを切り出し、使用する部門ごとに割り当てる形態のICTインフラである。単一の統合されたハードウェアインフラ上に、あたかも複数の仮想的なデータセンターが存在するような環境となる。
仮想的なデータセンターは、使用するユーザーに対する利用権限の付与や、使用上限、下限等のリソース制御を行いながら、統合された物理インフラ上で複数稼働させることができる。
クラウド基盤は、ビジネスの要求事項となる「スピード」、「柔軟性」、「多様性」を、「使いたい時にすぐ使える」、「使わなくなった際にすぐに解放できる」、「複数のインフラが統合されている」という形で実現している。
使いたい時にすぐ使える
クラウド基盤では、仮想マシンだけではなく、ミドルウェア、ネットワーク接続、ファイアウォール、バックアップ等を必要に応じて連携させることができる。これによって、複雑なシステムをシンプルに見せ、従来のように時間を要することなく、利用者自身により即座にシステムとして使用できる。
また、開発環境から本番環境への切り替えに関しても、従来のように物理環境に対して大幅な設計・設定変更を行うことなく、ソフトウェアで全体を制御することにより、短時間で切り替え可能だ。
使わなくなった際にすぐに解放できる
仮想マシンの解放に関しては、仮想マシンの使用期間を設定するという方法で解決している。利用しなくなった仮想マシンの削除を利用者や作成者に自動で要求することで、リソースの効率化を保てる。
複数のインフラが統合されている
クラウド基盤では、統合された基盤上でマルチテナントを実現しており、テナント(組織)ごとにユーザー及び権限を付与することが可能だ。これにより、統合した物理インフラ上で、利用率、性能、可用性、セキュリティポリシーが異なる複数の部門のシステムを並列的に稼働させることができる。
さらにこれらの部門ごとに利用者のアカウントを管理し、必要であればコスト管理を担う責任者に対して承認を促すことも可能なため、組織全体でのコスト意識を保ちながらインフラを運用することができる。
このようなクラウド基盤の特徴を実現するために必要となる代表的な機能は、「ポータルと権限機能」、「テンプレートと利用期間の設定」、「クラウドに必要なネットワーク」の3つだ。
これらの機能を実現するためには、サーバ、ストレージ、ネットワークと、クラウドを構成する要素を統合的に制御するための「クラウド管理ソフトウェア」と呼ばれる製品が必要になる。
以降では、VMwareの「VMware vCloud Automation Center」(以下、vCAC)、Ciscoの「Cisco UCS Director」(以下、UCS Director)、Citrixの「Citrix CloudPlartform」(以下、CCP)の代表3製品をピックアップし、それぞれの特長を解説しよう。