コンテストだけではなく、レスキューロボットに関する講演も
それから、両日ともに競技の終了後にはレスキューロボットに関する講演が行われた。初日は長岡技術科学大学 システム安全専攻 准教授で、NPO国際レスキューシステム研究機構理事の木村哲也氏による「災害対応技術を強くするリスクアセスメント」である(画像47)。国際的な安全の基本であるリスクアセスメントについての解説が行われ、年内に発行されるサービスロボット安全規格「ISO13482」に関しても紹介された。
また2日目の講演「災害現場における救命支援型担架システムの提案と実証」は、かつてレスコンの第1回から第6回までに参加し、現在は明石工業高等専門学校 機械工学科で教鞭を執る岩野優樹准教授が担当(画像48)。岩野教授は、レスコン出身で初のレスキューロボット研究者となった人物なのである。救命支援型担架システムとは、第八回竸基弘賞(阪神・淡路大震災で他界された、ロボットの研究を行っていた神戸大学大学院の博士前期課程1年生であった竸基弘氏にちなんだ賞)の技術業績賞を受けたレスキュー機器だ。
なお岩野准教授は、現在でも多くのチームがベルトコンベア型の要救助者収容装置を使っているが、それを開発した元祖である。岩野准教授によれば、自分1人のアイディアではないということだが、このベルトコンベア型の仕組みは、前述した東京消防庁の2代目ロボキューにも採用されており、それだけ実用的だったということだろう(ロボキューの開発には、岩野准教授がかつて所属していた研究室が関わっている)。
レスコンを経験した学生たちはさまざまな企業などに入って活躍しているが、岩野准教授のようにレスキューロボットの研究者になった人はほかにはいない。レスコンに参加することで、そうした研究者への道がぐっと近づくような仕組みがあると、せっかく興味を持って大会に参加している有望な若者たちがほかの分野に行ってしまうこともないのではないだろうか。
なお、岩野准教授は後輩たちに対し、「ロボットの開発には自分たちのレスキューに対する思いを形にしてほしい」ということと、「レスコンで培った想い・技術・経験・知識を少しでも誰かの・何かの役に立ててほしい」ということ、さらに「本気でレスキューロボットを開発したいと想ってくれる人が1人でも多く出てきてほしい」ということを伝えていた。
2日間にわたった大会を終えて
というわけで、第13回レスキューロボットコンテスト本選リポート、いかがだっただろうか。本当は全チームの全コンセプトなども紹介したいが、さすがに量的に無理なため、あとは公式サイトも目を通していただきたい。
今回、初めて本選を自分の目で見せてもらったわけだが、さすがに優秀なチームが多いのには驚かされた。2階建ての家ガレキの、あんな狭いすき間からどうやって救出するのか不思議に思っていたが、多くのチームがそれを実行していたし、ファイナルミッションでは家ガレキが傾いているにもかかわらず、それでも救出を行っていた。こうした機構は現実にレスキューロボットを開発する時、非常に役に立つと思われるのだが、どんなものだろうか。
こうしたアイディアが大会で終わってしまうのではなく、実行委員会には多くの研究者が参加しているわけだから、レスキューロボットでなくてもいいので、建設機械でも何でも、何かの機械にちゃんと採り入れられるよう、その仕組みやアイディアを評価して、いずれかの企業に紹介しにいくとか、可能性をもっと広げる取り組みをしても良いのではないかと思う(企業の技術部門の責任者とかがスカウト目的で見に来てくれるようになると良いのだが)。
また、いくらインターネット時代で情報を集めやすかったり、自分たちをアピールしやすかったりする環境が昔に比べて整っているとしても、それから教育者として「何事も自分たちでトライして身につけてほしい」的な考えがあるとしても、やはり学生ではまだまだわからないことも多いと思うので(特に高校生などは)、せっかくのアイディアを「ただのロボットコンテストの面白いアイディア」で終わらせないようにしてみるのはいかがなものだろうか。選手たちも、自分たちのアイディアは、レスコンの場以外でも役に立てばすごく自信になると思う。
それから感心させられたのが、やはり20年近く経つとはいえ、かつて大震災を経験した街だけあって、一般の方の関心の高さが伺えたことだ。子どもたちが遊べるような用意もいろいろとしてあるのだが、それでも多くの観客が来ており、かぶり付きの特等席で応援する小さな子どもたちもたくさんいた(画像49)。
大会そのものもとても面白かったので、首都圏で本選をできれば、もっとメディアも取材に来て大会のアピールもできるのではないかとは思うのだが、レスコンは神戸で開催することがアイデンティティであるロボコンなので、本選を首都圏で開催するというのは難しいのだろう。となると、今回から開催された東京予選はとても重要になってくるかと思うので、今後、東日本の学生や社会人が参加したくなるよう、どんどんアピールしてもらいたい。
そして今年の東京予選を見る限り、まだ初参加ということもあって、苦戦しているチームが多かったので、例えば神戸予選で高得点を出したチームをゲストとして招待して、お手本として披露してもらうとか、いかがだろうか。たぶん、一般の観客にとっても面白いものになると思う。
どちらにしろ、すでに第14回大会のスケジュールはもう決定しており、レスコン神戸説明会が2013年12月7日(土)、会場は神戸市立青少年科学館。レスコン東京説明会が翌8日(日)、東京都立産業技術高等専門学校 荒川キャンパス。神戸予選は2014年6月29日(日)、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)。東京予選はその1週間後の7月6日(日)で、会場は説明会と同じだ。そして本選は8月9日(土)・10日(日)のいつも通りの2日間で、会場は予選と同じとなっている。
なお、第14回の会場がレスコンの聖地である神戸サンボーホールからKIITOに移ったのは、同ホールが耐震補強工事のために使用できなくなるからで、それほど離れていないがKIITOが会場に選ばれた次第だ(ちなみに、今回の東京予選における会場だった東京都立産業貿易センター台東館も大規模修繕工事のために2014年4月からの1年間は休館)。東日本勢ががんばってくれることを期待しつつ、第14回大会を楽しみに待つことにしよう。
あとせっかくなので、最後は、神戸サンボーホールのある三宮のJR駅周辺の宵の口の街並みを写真で紹介。神戸は初体験だったのだが、背後に山並みがすぐあって、とてもいい雰囲気の街だったことも合わせてお伝えしておく(画像48)。