実在の要救助者を意識した大賞受賞チーム

というわけで、この状態から、前述したようにさらにレスキュー工学大賞選考委員会が、書類審査からファイナルミッションまで、コンセプト、技術力、組織力のすべてを総合的に評価し、選出されるのである。レスキュー工学大賞には、このコンテストで成績がいいだけでなく、その先にある実際の災害現場を想定してそこでもよりよい成果を出せる可能性のあるもの、あるいは未来の救助活動を提案しているものが選ばれるという。そうして、第13回レスキューロボットコンテストの栄えあるレスキュー工学大賞を受賞したのは、金沢工業大学 夢考房の「MS-R」であった!!

MS-Rが受賞した理由は、モニターを独自に持ち込み、そこに救助を行ったダミヤンの特徴を映し出すという仕組みだ(画像44)。ダミヤンを実在の要救助者と考えた時、残された家族が心配していることは大いに予想され、待っている家族に救助されたダミヤンの特徴をいち早く伝えて安心させることに努めるという、まさに救助活動にあるべきものとして、大きく評価されたということだ(競技ポイントには一切反映されないが、彼らはそれをやってきた)。

画像44。モニターに表示されるダミヤンの特徴

また、MS-Rはダミヤン救助の際にロボットアームでつかんだ柱ガレキなどを、ちゃんと公有地に廃棄しており、万が一相手チームが通行する時にもちゃんと邪魔にならないようにしている。そういう細やかさも評価された。

さらに、フィールドを見下ろす高い位置に備え付けられた、ヘリからの空撮をイメージした「ヘリテレカメラ」を毎年の如く一切使わないのだが(作戦会議タイムでは、これで自チームが救助すべきダミヤンの位置を確認し、どういうルートで移動するかなどを決める)、今年も使わず、作戦タイムはどうしているのかという質問には、「精神統一をしています」と答え、それもよかったという。

加えて、MS-Rはinrevium杯、ベストプレゼンテーション賞(レスコンの観点から、チーム戦略などについて最も優れたプレゼンテーションを行った個人に贈られる)も受賞し、3冠となった。ベストプレゼンテーション賞を受けた理由は、非常に明瞭で、チームの思いがよく伝わってきたことが評価された。

受賞に際してMS-Rのキャプテンは、「実際に災害現場で使用できるものと自分たちで考えたコンセプトが、評価されて大変嬉しいです。またがんばってくれたチームのみんなにはとても感謝しています」とコメント。アイディアが評価されるというのは、工学系の学生にとっては非常に嬉しいことだろう。

そのほか、レスコンアニュアルプライズは、以下の通りである。

  • ベストパフォーマンス賞:レスキューHOT君/近畿大学 産業理工学部 総合ポイントが最も高いチームに贈られる賞で、1500点満点中の949点で第1位となったことから贈られた。

  • ベストロボット賞(レスキューロボットコンテスト日本ロボット学会特別賞):レスキューHOT君/近畿大学 産業理工学部の2号機「プリキュー」 ロボット工学の観点から、最も優れたロボットに贈られる賞で、その理由は、ダミヤンを家ガレキから救助に成功して、振り子式子機が格納庫でよく動いていたということで、ロボットとして非常にいいロボットだったことが評価された(画像45)。

画像45。ベストロボット賞となったレスキューHOT君の2号機「プリキュー」

  • ベストチームワーク賞(消防防災ロボット技術ネットワーク賞):メヒャ!/岡山県立大学 ロボット研究サークル レスキュー活動の模範となるチームに贈られる賞で、その理由は、災害現場でレスキュー隊員同士のコミュニケーションとして重要な、声がよく出ていたこと、声の掛け合いがよかったことが評価された。

  • ベストテレオペレーション賞(レスキューロボットコンテストサンリツオートメイション賞):大工大TECFER/大阪工業大学 モノラボロボットプロジェクト 同賞は遠隔操作技術や遠隔操作システムの優れたチームに贈られ、受賞理由はロボットの周囲にセンサを配置し、障害物を感知できるようにしてあり、PCの画面に表示したり音声で知らせたりする仕組みがちゃんと使えるものになっており、しっかりと効果を上げていたことが評価された(画像46)。

画像46。大工大TECFERのロボットの周囲にセンサを配置して障害物感知を行えるようにしたことを説明しているプレゼン画面の一部

また、レスコンエクストラプライズは、以下の通りだ。

  • 消防庁長官賞:大工大TECFER/大阪工業大学 モノラボロボットプロジェクト
  • 日本消防検定協会理事長賞:からくり忍者/東海社会人連合

関係団体賞は以下の通り。

  • 第9回竸基弘(きそい・もとひろ)賞レスキューロボットコンテスト奨励賞(特定非営利活動法人 国際レスキューシステム研究機構):長湫ボーダーズ(愛知工業大学)
  • レスキューロボットコンテスト日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門一般表彰:レスキューHOT君/近畿大学 産業理工学部

レスコンメモリアルプライズの3賞は以下の通り。

  • レスキュー工学奨励賞:MCT/松江高専 機械工学科
  • 技術賞:SHIRASAGI/兵庫県立大学 ロボット研究会、なだよりあいをこめて/神戸市立科学技術高校 科学技術研究会(以上2チーム)
  • アイディア賞:RMF rescue/電気通信大学 ロボメカ工房、救命ゴリラ!!/大阪電気通信大学 自由工房、とくふぁい!/徳島大学 ロボコンプロジェクト、特別救助隊産技荒川隊/東京都立産業技術高専 荒川キャンパス、六甲おろし/神戸大学(以上5チーム)

という結果となった。総合ポイント1500点満点中では851点で3位だったMS-Rだったが、ファイナルミッション前に発表されたレスキュー工学大賞候補チームランキングのまま大賞受賞となった。レスキューHOT君は100点近いリードをしていたが、総合評価では候補ランキング3位の位置からは逆転できなかったようだ。