John Fowler氏はソリューションの導き方から語り始めた。OracleとSunは同じ時代を共有してきたシリコンバレーの同世代企業だ。顧客が直面している問題に対して、それぞれにユニークなアイディアを持ち、技術開発に取り組んできた。Oracleはアプリケーション性能や可用性、セキュリティの向上に努め、Sunはマイクロプロセッサやハードウェア、Javaなどからアプローチしてきたという具合だ。64-bitデータベース、並列クエリ、マイクロプロセッサ、OSなど、素晴らしい成果がソリューションとして形になっている。だが、これらは結果の組み合わせに過ぎない。性能、可用性、セキュリティ、管理性能などの向上を目標に、最初からハードウェアとソフトウェアの両面からアイディアが持ち寄られたらどうだろう。ソフトウェアのトラブルを、ハードウェアが解決できるかもしれないし、見方の異なるエンジニア同士が意見交換するだけでも状況が変わる可能性もある。技術個々ではなく、システム全体、プラットフォーム全体での革新的な進歩が期待できる。それがOracleとSunの統合によって可能になる。
前日のExalogicの発表では、1つのパッチで問題を修復できる効率的な管理性能がアピールされた。これはハードウェアが同じ設計に基づいているから可能になるソリューションだ。アップデートが簡単というだけではない。ある顧客に発生した問題は、同じ設定の他の顧客にも起こり得る。1つのトラブル報告をすぐに調査して対応すれば、不具合が広がる前の迅速な対策が可能になる。
"ハードウェアとソフトウェア"の時代のプロセッサとして、Fowler氏は「SPARC T3」を発表した。16コアを搭載し、128スレッドの同時実行が可能。従来のSPARC Tシリーズ・システムと比べて2倍のパフォーマンスを実現する。暗号化機能、10ギガビットEternet機能が統合されており、コストパフォーマンスが求められる小規模なシステムから、ミッションクリティカルな用途向けのセキュアなシステムまで幅広くサポートできる。SolarisとOracle VM Server for SPARC 2.0で動作するSPARC T3システムは1サーバあたり最大128仮想マシンに対応し、Oracle Database、Oracle Fusion Middleware、Oracle Applicationsなどと連動したソリューションに最適化されている。
SPARCプロセッサを搭載したエンタープライズシステムの要となるSolarisについても来年リリース予定の次期版「Solaris 11」の情報がプレビューされた。アップデートの際の再起動を50%削減、再起動のダウンタイムを数秒に抑えるほどに起動時間が短縮される。また継続的なサポートを実現するリモートテレメトリ機能を装備。近い将来サーバが数百テラバイトのメモリを搭載できるようになるのを見越して、Solaris 11の仮想メモリサブシステムは今日の数百スレッドから数千スレッドの処理を前提にしたものに変わるという。ネットワークについても100Gbpsへの対応を課題とした。
最後にHurd氏がふたたび壇上に現れて「Oracle Exadata Database Machine X2-8」を紹介した。合計128コアのIntelプロセッサおよび2テラバイトメモリを搭載する2基の8ソケットのデータベースサーバを搭載。168コアのIntelプロセッサおよび最大336テラバイトのストレージ容量を備える14台のOracle Exadata Storage Serverを装備できる。Exadata Smart Flash Cacheを5テラバイトまで搭載可能。ハードウェアによる複合化でオーバーヘッドを解消し、完全に暗号化したデータベースで1秒あたり数百ギガバイトのクエリを実行できる。
終盤は駆け足になったが、総合ベンダとしてのOracleの可能性を存分に示した90分だった。だが、これはスタートに過ぎない。いまのOracleは、エンタープライズ市場における次世代のテクノロジモデルを思い描き、それを実行できる数少ないポジションにある。テーブルの上に積み上がったピースを組み合わせ始めたが、完成した絵がどのようなものになるかはまだ見えてこない。IBMやHPとの競争を勝ち抜くのが目的だとしたら、それはあまり魅力的な絵ではない。クライアント/サーバやオープンシステムが新しい扉を開いたときのような、だれもが感嘆するような絵を見せてもらいたいと思う。