スクリーンと紙、それぞれに最適な文字の姿を追求する
メディアとオンスクリーンメディアは対立概念だと思われているが、テクノロジーが発達するにしたがい、「技術的な問題」は、どんどん解消されていく。永原は「紙もオンスクリーンも、実は同じ問題を抱えている」と指摘した。
とはいえ、それはオンスクリーンが紙に近づいていくということではない。紙には紙ならではの質感があるように、いずれオンスクリーンならではの質感を追求する時代がやってくるだろう。原は「あくまでも個人的な感覚ですが、やはり紙に刷られた文字と、オンスクリーンメディアの文字は、まったく違う」と述懐した。
その点、宮崎が紹介した、オンスクリーンでの文字の「現れ方」や「消え方」は、新たな質感表現になりうる可能性を秘めている。同時に、鳥海は、文字の歴史を受け渡すことの重要性を説いた。「明治以降、日本人の標準書体として機能してきた明朝体」を残すこと。紙であれオンスクリーンであれ、その美しさを受け継ぐことの意義は、強調しておきたい。
研究会を終えて
永原康史実際に文字をつくる職人タイプのデザイナーは、文字は美しくあるべきだと説き、文字の行く末を考えるアートディレクターは、読まれていないときのたたずまいを問う。「読む」ではなく「見る」からはじまる美意識に共感した
原研哉水や空気と同じく文字も美しくなくてはいけないと考える鳥海さんの考えに共感。一方ではアクシス明朝の明晰な発想に感心した。同時に自分は文字のデザイナーではなく言葉のデザイナー。タイプフェイスはよく使う包丁のようなものだと思った
(撮影:弘田充)