そうしたセンシング技術の応用として、同日、同社は「オフィスの電力の見える化技術」と「さまざまなジャンル映像から見どころのみを自動で抽出しダイジェストを生成する技術」を発表。半導体技術やサーバ、ネットワーク技術などといった成果物と併せて展示を行っていた。
オフィスの電力の見える化技術は、独自に開発した小型の磁界検出素子(ホール素子)を活用し、各コンセント間の干渉を最少にするシミュレーションによる設計と組み合わせることで、4つのコンセントを持つ電源タップを開発。このコンセントより給電される機器がどの程度の電力を消費しているのかをリアルタイムで補足することが可能となるというもの。
2010年4月1日より施行された改正省エネ法は、規制範囲がこれまでの工場や事業所単位に加え、企業全体のエネルギー使用量が基準を超す場合にも管理が義務付けされることから、オフィスでの省電力化需要が高まることを見越しての開発物となっている。
コンセント1つ1つ別々に1~2000Wまで1W単位での電力測定が可能で、今回のタップではUSBインタフェースを介して、それをIPアドレスに変換、サーバに行動パターンなどのデータを蓄積していく、という構成となっている。省エネルギーセンターの資料によると、オフィス内の電力は「空調」「照明」「コンセント」の3つがそれぞれほぼ1/3ずつ占めている状況だが、空調と照明はビルの管理者が確認できるのに対し、1つ1つのコンセントの確認は難しく、それが利用者の省エネ意識を高める妨げになっていたというのが同研究での認識であり、それを変化させるためには、こうしたタップによるデータ収集と、その結果の提示が重要になってくるという考えである。
スマート電源タップに実際に機器を接続した状態の様子 |
今回はUSB経由でデータを送信、その先でIP変換してサーバやPCにデータを渡す(ワイヤレス化なども今後の検討課題としていきたいとしていた) |
実際の機器ごとの時間単位の電力消費推移のグラフ。右側でグッと下から上がっている青い線は白熱電球のスイッチを入れた時、赤い線は扇風機を回転させた時、それぞれ消費電力が一気に引き上げられている |
そのため、各種の表示用ソフトウェアも併せて開発したという。例えば、チーム全体の消費電力がどの程度で、その内、誰がどの程度使用しているのかの円グラフや、スケジューラと連動することによる一日の行動パターンと消費電力パターンの見える化などを用意。こうしたデータの表示を通すことで、ユーザーの「気付き」を促し、省エネへと結び付けていくことが可能になるという。事実、同研究所で、50名程度による2カ月(タップ適用前1カ月、適用後1カ月)の試験では、前後で約20%の消費電力削減が実現されたという。また、例えば消費電力の大きいデスクトップPCからノートPCへの利用変更や、液晶ディスプレイの輝度を必要最低限のところまで落とすことなど、何が電力を消費しているのかが理解できるようになったという。
一方の映像ダイジェスト生成技術は、ネットワーク上での映像ソースの爆発的増加に対応するために開発されているもので、大量の映像の中から見るべき映像のみを素早く見つけることを目的としている。
そのため、対象となる映像の種類に区切りがなく、従来でもダイジェストの生成が可能であったスポーツやニュースといったメリハリのあるもののみならず、家庭用ホームビデオで撮影した子どもの発表会や定点観測カメラで撮影した動画などでもダイジェストを生成することが可能となっている。
具体的には、「音響盛り上がり」や「色レイアウト」、「カット頻度」「無音区間」などの200種類以上の特徴抽出機を用意。これらの特徴をもとにさまざまな観点からの分析が実行される。これらの特徴抽出機は、基本はすべてを使用することとなるが、ユーザーサイドで何を使用するのかの選択も可能で、ダイジェスト時間も任意の時間に指定することが可能となっている。
ダイジェスト生成にかかる時間などはサーバ側の性能やネットワーク帯域などの影響もあるため、一概には図ることは難しいとしていた。
同社では、同技術を2010年度中に映像の共有/配信サービスへの適用を予定しているほか、カスタマ側からのニーズ次第では同生成エンジンのハードウェア化も可能性があるとしている。
なお、このほか成果物として、10Gbpsシリアルミッドプレーン対応の1チップイーサネットスイッチLSIによる高密度実装と省電力化を実現した「10GbEスイッチブレード」や電源装置向けGaN HEMTデバイス、カーボンナノチューブやグラフェンを活用した半導体デバイス/素子なども展示されていた。