クエスト・ソフトウェアでの施策
以上のような経歴を持つ山岡氏が、クエスト・ソフトウェアの代表取締役という立場をあずかるにあたり、最初に取り掛かろうとしているのが注力分野の選定である。
米Quest Softwareは「200近くのソフトウェア製品を保有しており、システムマネージメントに役立つ製品は全部そろっている」(山岡氏)という。しかし、それらすべてが日本企業にマッチするというのは考えづらい。先述のとおり、現在の日本市場のニーズを見極め、適切な時期に適切な製品を提供していく必要がある。
そうした考えの下、クエスト・ソフトウェアのポートフォリオと、国内におけるシステム開発/運用の現状とを照らし合わせて選定した分野が「データベース開発/管理」、「Windows環境のサポート」、「仮想化環境のサポート」の3つである。
データベース開発/管理
これらのうち、データベース開発/管理では、SQL文のチューニングツールに力を入れる。SQL文のチューニングは、ボトルネックを発見し、チューニングを行い、負荷検証を実施するという、極めて単純なものだが、山岡氏によると、「優れたツールがあるのに、現在でも属人化を脱しきれいない部分」だという。
「プロセスの議論は激しく行われているが、ツールによる標準化は進んでおらず、現在でも担当者によって品質にばらつきが出る。それを補う製品はあるのに、国内では代表的な製品というのが存在しない状況」(山岡氏)
同社では、この部分を補う製品として「Toad」をOracle DatabaseとMicrosoft SQL Server向けに提供しており、こちらに対して日本向けの販売体制を整える意向だ。
Windows環境のサポート
また、Windows環境のサポートに関しては、特にIBM Lotus Notes/DominoのデータをMicrosoft Exchange Serve 2000/2003/2007に移すことができる「Notes Migrator for Exchange」の販売を強化していく。
山岡氏によると、Notes/DominoからExchangeへのマイグレーションでは、「Microsoftのフリーのツールを使う」、「手作業ですべて行う」、「Notes Migrator for Exchangeを利用して自動実行する」の3つが現在の主な選択肢になっているという。前者2つは、小中規模の案件ならば対応できるが、大規模の案件になると難しい。それを考慮すると、同製品は市場において重要な役割を担っていることになる。Exchangeへの移行で同じ悩みを抱えるユーザー企業に対してこういった製品があることを周知し、コスト削減を推進していく構えだ。
もう1つ、Windows環境のサポートという点では、監視ツールにも力を注ぐ。「InTrust」という製品により、ユーザーのアクティビティを監視し、すべての操作をログとして残すことができる。こちらは競合製品も数多く存在するが、他社製品よりも機能が豊富で安価であるため、十分に競争力があると見込んでいるという。
仮想化環境のサポート
そして、仮想化環境のサポートでは、性能監視に重点を置いてソリューションを展開していく。同社の仮想化環境管理製品は「人間が把握しやすいビューにより、ボトルネックを特定しやすい作りになっている」(山岡氏)という。
「物理サーバ、論理サーバの両面でCPU、メモリ、ディスクのどこに問題があるのかが一目でわかるようになっており、有事の対応がとりやすい。レポート機能も充実しており、将来的に必要になるリソース予測も行えるようになっている。また、他の製品と組み合わせることで、アプリケーションの内部の状態まで監視できるため、より高度なソリューションを提供できる」(山岡氏)
こちらも市場には同種の製品が多数存在するが、「中堅ベンダーであるにもかかわらず、ワールドワイドで高い実績を残していることからも優れた製品であることがおわかりいただけると思う」(山岡氏)と言い、日本でもその良さをアピールしていく考えだ。
ライセンス体系の変更にも着手
こうした日本市場の"本当のニーズ"に合わせた販売推進活動に加えて、エンピレックス時代と同様に日本向けサポートの強化も進めていく。
また、ライセンス体系も変更する意向で、従来のような売り切り型からサブスクリプション型などのSIerやユーザーが使いやすいものに変える予定だという。
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エンピレックス時代に豊富な実績を残した山岡氏だが、クエスト・ソフトウェアにおいても大幅なシェア奪取を達成できるのか。その手腕に注目したい。