最新製品を2、3年寝かすのも手

もう1つ、外資系ベンダーの製品を日本市場で広めるためのポイントとして山岡氏が挙げるのが「提供時期の見極め」である。

米国と日本ではIT技術の普及速度に大きな隔たりがある。山岡氏の見解では、「米国で流行したものが日本で受け入れられるまでには大抵2、3年かかる」という。そのため、「米国の新製品をすぐに日本に持ってきても、話題が先行するだけで、実際に利用してもらうまでに至らないことが多い」(山岡氏)ようだ。

こうした状況を避けるためには、「日本の現在のニーズを正しく把握し、タイムリーに製品を提供していくこと」(山岡氏)が重要だ。受け入れ態勢が整ってから製品投入/販売施策を進めていくほうが効率的であり、ひいてはユーザーのためにもなるという。

中堅ベンダーの売れている製品は相当な実力

こうした日本向けの対応を進めてきた結果、エンピレックスは数年で、国内テストツール市場において3割のシェアを獲得するまでに成長する。しかし、2008年に米Oracleが米Empirexの技術を買収。日本法人のメンバーも日本オラクルに転籍し、Oracleが元々持っていたテストツールの部署と統合され、大手企業の一部署として活動を続けた。

その後しばらくして、山岡氏は日本オラクルを退職。2009年9月にクエスト・ソフトウェアの代表取締役に就いた。

Oracleという大手企業での勤務経験について、山岡氏は、「経営者のキャリアという観点から貴重な経験ができた」と振り返る。

「日本オラクルに移って思ったのは、大手ベンダーは販売力、ブランディング力という点で圧倒的に有利だということ。そのため、大手ベンダーの製品はそこそこのものでも十分に売れる。それに対して、中堅ベンダーの製品は本当に良い製品じゃないとまず売れない。半信半疑のユーザーに納得してもらうところから始めなければならず、安価で優れた製品でも、ユーザーの下に届けるまでにはかなりの努力が必要になる」(山岡氏)

どんなに優れた製品も、使ってもらえなければ利益をもたらすことはできない。ユーザーの利益を最大化するためにも、良品を持つ中堅ベンダーには製品を普及させる責務がある。日本オラクルに在籍したことで、その責務の大きさを改めて実感できたのは貴重だったという。