その他のソリューションと比較した場合のメリット
では、従来型マルチモニタ・ディスプレイと比較した場合、DisplayPortの主要なメリットは何でしょうか。それは、ハードウェアに実装するだけで利用できることです。そのため、モニタ、マザーボード、ドッキングステーション、アダプタを使用して、使いやすい真のプラグアンドプレイ・システムを簡単に構築することができます。送信側(GPU/ディスプレイ・ドライバ)に変更を加える必要はなく、DisplayPort対応のPC(ノートPCでもデスクトップPCでも可)で簡単に動作します。
DisplayPortマルチモニタ・ソリューションのもう1つの主要なメリットは、完全にハードウェアを介して行なうソリューションであるため、MicrosoftのWHQL認定が不要であることです。
さらに、DisplayPortベースであることにより、DisplayPort v1.1a、VESA Direct Drive Monitor、HDCP v1.3、EDID v1.4に準拠/対応している標準ベースのプロトコルになります。そのため、USBをベースとしたプロプライエタリな実装の場合と比較して、完全な相互接続性を備えた、より幅広い業界のサポートを受けることができます。シングルソースによる実装は業界標準ではなく、幅広い業界での採用に関しては問題が発生します。また、コスト効率は開かれた市場での競争によってのみ達成されます。
DisplayPort対応のマルチモニタ・ディスプレイ・ソリューションのさらにもう1つの主要なメリットは、一部のシステム・ソリューションがDisplayPortケーブルの電源で動作できることで、これはDisplayPort v1.1aの規格に基づいています。通常、デバイスを動作させるためには別のAC電源が必要なのに対して、DisplayPortのケーブルには1.5Wの電力が流れるため、ディスプレイに接続されるさまざまなアダプタがその電源で動作することができます。これを、1枚のマルチヘッド・グラフィックス・カードを設定する場合や、100W以上の電力を消費する複数のグラフィックス・カード・ソリューションと比較した場合、DisplayPortソリューションでは消費電力を大幅に節約できます。
高解像度モニタに対するニーズが高まり、マルチモニタ・ディスプレイのために多くの高解像度モニタが必要とされることもあり、DisplayPortの実装の改善は次期DisplayPort1.2の機能拡張で対応する見込みです。この高解像度への対応を実現するために欠かせないのは、帯域幅を2倍にして21.6Gbpsにすることです。これにより、マルチディスプレイ環境における高解像度マルチモニタ・マルチストリーム・ビデオ/オーディオ・データが可能となります。
最後に、新しい技術が登場した場合、従来のディスプレイも問題なく利用できるようにする必要があります。DisplayPortからの変換ソリューションやブリッジ・ソリューションは豊富に存在するため、従来のディスプレイはすべて新しいDisplayPort対応ソリューションを活用してマルチモニタ・ディスプレイ・ソリューションを実現することができます。たとえば、変換機能が組み込まれたハブであれば、DisplayPort対応PCと、DVI、HDMI、またはVGAポートを備えた従来のモニタを接続することができます。
まとめ
DisplayPortのキラー・アプリケーションは、マルチディスプレイを効率よくかつ費用をかけずに実現できるもので、単一デジタル出力ポートを割り当てるため使用できる表示アプリケーションに制限がなく、遅延もありません。この独創的でしかも普遍的なニーズはこれまで手つかずの状態でしたが、DisplayPortの技術によって初めてこのニーズが満たされるのです。
著者
Ji Park(ジ・パーク)
米Integrated Device Technology(IDT)
バイス・プレジデント兼ビデオ&ディスプレイ・オペレーション担当ゼネラル・マネージャ
ダラス大学(University of Dallas)でMBAを、テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)でBSEEをそれぞれ取得。Henry Zeng(ヘンリー・ゼン)
米Integrated Device Technology(IDT)
ビデオ&ディスプレイ・オペレーション・グループのアプリケーション・エンジニアリングおよびテクニカル・マーケティング担当ディレクタ
ディスプレイ、グラフィック・コントロール、ビデオ・プロセッサ分野において20年以上の経験あり。
中国の復旦大学(Fudan University)でコンピュータ・サイエンス学学士号を、北京大学(Beijing University)でコンピュータ・サイエンス学修士号をそれぞれ取得。