マルチストリーム、マルチディスプレイ
この新しいビデオ・マイクロパケットベース・インタフェース・アーキテクチャ独自のメリットの1つは、単一のデジタル・ポートで複数のディスプレイをサポートできるといった、最新機能のサポートです。たとえば、DisplayPortの注目すべき機能としてあげられるのは、単一のデジタル出力ポートから無制限にマルチディスプレイ・モニタを使用でき、かつ表示アプリケーションの制限はなく、遅延ゼロでディスプレイのパフォーマンスをフルに利用できることです。そしてその消費電力は、現在提供されているマルチモニタ・ソリューションとしては最小限に抑えられています。これらはすべて真のプラグアンドプレイで、ユーザが手動で設定変更する必要性がなく、かつ手頃な価格で入手できます。
対象ユーザ
DisplayPortのマルチモニタのサポートは素晴らしいものですが、最も重要な問題は誰が使用するかということです。現実世界には、マルチモニタ・ディスプレイのために存在するかのような用途があります。たとえば次のようなものが考えられます。
- パノラマビューをフルに楽しみたいハードコア・ビデオ・ゲーマー(パノラマビューがあればそのゲームに没頭することができる)
- 単一の大きなウィンドウに設計全体を表示するCADの設計エンジニア
- シミュレーションを実行しながら、配線図やレイアウトを表示する回路設計エンジニア
- コーディングしながら、同時にフローチャートとドキュメントを表示するコンピュータ・プログラマ
- 特別に大きなスプレッドシートを表示する経理担当者
- 一度に複数のクリップを表示しながら、同時進行でストーリー・ボードを編集する映画編集者
- 同時に複数の場面の編集や、レイアウトを行なうグラフィック・アーティスト
- 同時に複数の写真を表示し編集する写真家
- 複数の株価や債権、顧客情報やスプレッドシートを同時にトラッキングする金融機関
- 同時に複数のアプリケーションのモニタやその実行をする政府機関
- 他の参考データを表示しながら、同時に複数の顧客情報を表示するコールセンター
- Eメールの返信やインターネット検索を行ないながら、複数のドキュメントやスプレッドシートを操作するオフィスユーザ
- 映画を見たりFacebookでチャットしたりしながら、また別のチャットをするホームユーザ
これらの用途それぞれが抱えている特定のニーズは、DisplayPortのマルチモニタ・ソリューションで対応でき、それによってユーザ体験が向上するとともに、全体的な作業効率や生産性も向上します。フラウンホファーIAO研究所による2009年2月の調査では、1台のディスプレイを使用した場合と比べて「3台のディスプレイを使える業務環境は生産性が35.5%アップする」と報告しています。一方で、大きなディスプレイを1台使用した場合では、その生産性は複数のディスプレイを使用した場合と比べてほんのわずかしか改善しない、ということも報告しています。
現在、PCでマルチモニタ・ディスプレイを使用するにはいくつか方法があります。デスクトップPCの場合、モニタを1台追加するたびに1枚のグラフィックカードをインストールするか、または複数の出力ポートを備えた高価なマルチヘッド・グラフィックカードを購入してインストールする必要があります。ノートPCの場合は、外部ボックスやVGAポートに接続する外部ボックスを備えたPCMCIA/Cardbusカードを使用する必要があります。また、デスクトップPCとノートPCどちらの場合もUSBベースのソリューションを利用することもできます。
しかし、上記のソリューションにはそれぞれに問題やデメリットがあります。その一部を以下に紹介します。
- 高コスト:カードや外部ボックスを追加する場合、デュアルモニタで150ドルから、クアッドモニタで600ドル以上かかる
- 高いサービスの必要性:グラフィックカードのインストールにはPCの筐体を開ける必要があるため、ITエンジニアが必要
- 拡張性の制限:モニタの追加にはグラフィックカードや外部ボックスのアップグレードが必要な場合がある
- 消費電力の増加:マルチ・カードやマルチヘッド・グラフィックカードの消費電力は100W以上になる場合がある
USBを利用する場合は、次のような制限があります。
- USBの帯域幅に制限があるため、圧縮によりビデオの画質が低下する
- CPUやメモリ・リソースへの負担がかかる
- システムOSとドライバとの互換性がない
- 特にドライバのアップデートに伴いWindows Hardware Qualification Labs(WHQL)の認証に関する問題がある
- 映画の再生に必要なHigh Definition Content Protection(HDCP)に対応していないため、このソリューションに完全に依存するのは問題がある