高橋恒雄氏の基調講演
続いて再びバトンは高橋社長に戻ってきて、もう少し日本市場をベースとした話に移った。
まず自動車に限らず産業全体が冷え込んでいるのは言うまでも無いことである(Photo19)。ただしそうした状況にあっても、安全性や燃費の向上に関してはたゆまぬ努力が続けられている(Photo20)。大きな努力目標としては、燃費とも絡むがCO2の排出量削減と交通事故死者数の削減があり、これにむけてどう取り組むかという話になる(Photo21)。
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Photo19:それでも自動車業界が今年に入って多少復調の兆しを見せているのがせめてもの救いか
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Photo20:燃費に関してはハイブリッド車は大幅に改善できることは判っているが、現時点ではハイブリットが量産できているのはごくわずかなメーカーだけだし、例えばトヨタにしてもプリウス以外にハイブリッドを広く展開できているわけではない。したがって従来型エンジンについても、引き続き燃費改善の作業は必要である
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Photo21:ちなみにこれは民主党の公約の話とは無関係な目標だからして、今後この数値はさらに厳しくなる可能性がある
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昨年までのFTF Japanでは、この燃費改善に向けてハーネスの軽量化などを例に取った話が示されていたが、今年はテーマを交通安全に移した。パッシブセーフティにより、ある程度は交通事故死者が減っているが、この先も減らしてゆくには、アクティブセーフティを取り入れて行く必要があり、このためには77GHz帯を使ったミリ波レーダが有効であるというのは以前から議論されていたことだし(Photo22)、実際これを搭載した車種もある。ただし従来のミリ波レーダは大掛かりかつ高コストなため、実際問題として高級車でしか搭載されていなかった。これを解決するため、SiGeベースでミリ波レーダの送受信回路を作っている、というのが同社の取り組みで、実際に国内の自動車メーカーと共同開発中のSiGe素子が示された(Photo24)。
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Photo22:右側のグラフから判るとおり、衝突直前に少しでも車速を落とすことが死亡率の低下に役立つが、このためのオートブレーキなどを搭載するためには、衝突しそうだということを検出する必要があり、そのためにはミリ波レーダを使って進行方向の状況を取得する必要がある(さもないと運転中に勝手にブレーキがかかりかねない)
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Photo23:従来の場合、まずGaAs素子が非常に高価で、かつ回路規模も大きかったので、価格が30万円ほどもするという代物で、物理的にも大型の高級車でないと搭載できないし、価格的にも100万~200万円台の車両には搭載しにくかった
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Photo24:SiGeのレーダユニットを示す林章氏(車載事業担当ジェネラルマネージャー)。あくまでこれは素子だけで、実際にはこの他に色々必要ではあるが、それでも全体の実装面積を6cm2まで縮小できるから、実際には大幅な小型化が可能となる
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Photo26:説明およびデモを行った伊南恒志氏(マーケティング本部ジェネラルマネージャー)
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次はネットワークである。トラフィックもさることながら、国内の携帯電話がほぼ3Gへの移行が済んでおり、すでにHSDPA/HSUPAのサービスが開始され、2010年以降はLTEのサービスも開始される見込みだ(Photo25)。問題は、LTEのサービスは基地局にとっても非常に負荷が高いことである。説明を行った伊南氏(Photo26)によれば、3.5G→3.9Gで、必要となる処理量が大幅に増える(Photo27)ため、従来と同じ方法で基地局を作るとコスト・消費電力が膨大なものになる。
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Photo25:国内ではまもなくPDCのサービスも終了するわけで、来年にはほぼ100%近くが3Gに移ることになる。ちなみにこのグラフは特定の携帯事業者ではなく、全社の合計だそうだ
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Photo27:ちなみに処理量は単にデータ転送量が増えるだけでなく、技法的に難しくなることも関係する。特に誤り訂正に使われるターボ符号は早くから知られていた技法だが、これまでは「効果的ながら計算量が爆発的に増えるため現実的ではない」として長いことお蔵入りされていたものである。LTEや10GBase-Tで採用されることになったが、これは「昨今の半導体製造技術をもってすれば、なんとか処理できる」ということで採用されたという経緯がある
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これに対して同社ではStarCoreを6個搭載したMSC8156を使い、ここの処理を1チップで処理できる(Photo28)事をデモした(Photo29)。これにより通信事業者は、基地局を低コストで実現できることになり、LTEの普及に貢献する、としている(Photo30)。
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Photo28:これは受信データをいったんメモリに蓄え、そこからMSC8156を通してデータを認識させるというデモである
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Photo29:動作中の様子。左下が、RF(というか、メモリ)から入ってきた誤り訂正前のデータで、その右がMSC8156でチャネル推定及び誤り訂正を掛けた波形である。誤り訂正後はちゃんとPAM16で波形が整っているのが判る。右下は各コアの負荷を示したもので、75Mbpsのスループットを処理するのにコアの負荷が半分程度、つまり全力で動けば150Mbps程度のデータを処理できることが示される。
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Photo30:同社の従来のDSPでは、別にFPGAを使っての処理が必要だったが、MSC8156は単体で処理が全部済むのでFPGAが不要になる、としている。また4Gではさらに処理が複雑になるが、これに対応した将来製品も用意されていることが示された。
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