デザイナーは何をデザインするのか - 「デザインのひみつ」
ここで話は変わって、"デザインとは何か?"ということについて園山氏は語る。「デザインとは? カッコイイ絵を描いたりカッコイイ形を考える仕事? そういうことも大切だけど、実はもっと大切なことがある。それは"人のことを考える"ということ。デザインしたモノを実際に使ってくれる人、つまりユーザー、お客さんのことを考えるのが一番大切」
「デザイナーと芸術家は違う。芸術家は、自分が美しい、カッコイイと思うモノを描いたり作ったりする。だけどデザイナーは、デザインしたモノを使ってくれる人がいいと思うかどうかが大切。自分はオレンジが好きでも、彼はグリーンが好きだと分かったら、そう塗らなければいけない。もちろん、オレンジもどうですか?、という提案はしてもいいけど、常にユーザーが何を喜んでくれるか、何を欲しいのか、ということを考えないと押し付けになってしまう。俺はこう思うから君もこう思え、というのはデザインではない。人とモノとの関係を考えて形とか色とかを決めていくのがデザイナーの仕事なんです」とするが、でも、ここで問題がある。デザイナーだけではどうにもならない!、と園山氏は続ける。
「デザイナーが考えたモノを形にするには、研究者、技術者、営業マン、いろんな人たちとの一致協力が必要。それぞれの立場の人が、なぜそのデザインなのかをしっかり納得して、"そのロボットを作ろう"、"こうすればできる"、"こうすれば売れる"、と一緒になって考えてくれないといけない。そのためには自分の考えをきちんと伝えることが大切。"これ、かっこいいでしょ?"というのではダメ。なぜかっこいいか、誰にとってかっこいいか、これがかっこいいとどういう意味があるか。きちんと伝えられないといけない」
「こんな話をすると、よく"絵が上手じゃないとデザイナーになれないの?"と質問されるが、そんなことはない。もちろん、上手な絵は有力な武器になるが、絶対に必要ではない。デザイナーの中にも絵が下手な人はいる。そういう人たちはどうしているかというと、しゃべるのがうまい。説明がものすごく分かりやすい。説得力がある。それで、その人の考えが商品になってユーザーの手に届けば、それは立派なデザインな訳です」
「なので、図工が苦手だからデザイナーになれない、とは思わないで欲しい。絵が下手でも"僕の言ったことはみんな賛成してくれるな"という人がいたら、ぜひデザイナーを目指してみて欲しい。算数は苦手だけど体育が得意という人も、自分の身体のどこを動かすとどうなるか、どこがしんどいかよく分かっている分、人型ロボットの優秀なデザイナーになれるかも知れない。どんなやり方でも構わないので、自分の得意なことを活かして、人とモノとの関係をきっちり考え、人に説明できること。それデザイナーの資質として大事なんです」と、絵が上手いだけがデザイナーに求められる資質ではないと説明した。