どのような企業が導入のメリットを得られるのか

実際にvProを導入しているのはどのような企業なのか、あるいは、どのような企業で導入すればメリットが得やすいのだろうか。この点について伊藤氏は、PCの台数がキー・ファクタだとし、「人が直接出向いて管理するという手法は、おおよそ100~200台程度が限界でしょう」という。つまり、それ以上の台数のPCが存在する企業では、vProを導入し、遠隔集中管理体制に移行することで運用管理の負担軽減/TCO削減といったメリットを享受できるという見積もりだ。拠点が分散している場合も同様だが、伊藤氏は「拠点が一カ所だけでも、ある程度以上台数が増えたら問題は一緒です」という。10階建てのビルの各フロアに総計1,000台のPCが設置されている、という状況では、1台1台のところに順番に出向いていくのは非現実的な話となってくることに変わりはないというわけだ。

一方、vProは個人向けPCと比べると高度な付加機能を実装しているため、当然価格も高いだろうと想像され、それも普及の障害になっているのではないかと想像したのだが、その点はさほどの問題になっていないそうだ。リース契約の更新タイミングの問題もあり、vProを導入するにしても数年を掛けて徐々にvPro対応機に入れ替えていく、というやり方になるだろうとも想像したのだが、伊藤氏は「一括で入れ替えてしまうユーザー企業の方がむしろ多いくらいです」という。遠隔集中管理の体制を構築しても、非vProクライアントが多数残存している状況では効果が得られにくいこともあって、導入を決断した企業では、全社的に一括で機種更新に踏み切るようだ。

その場合、導入台数が多くなることもあってか、「コスト的にはvProだからといって目立って高くなるということはありません」(伊藤氏)という。さらに、明言はされなかったものの、vProの普及促進のためにvPro対応機の方が値引率が大きく設定されているようなケースもあるようだ。必ずしもvProの特徴とまでは言えないものの、最新世代のPCでは消費電力も低く抑えられているため、省電力効果も考えればコスト的な負担を心配する必要はほとんどないようにも思える。

どうやって導入していくのが得なのか

日本での一般的なPCリースはおおむね契約期間が3~4年に設定されているようなので、登場からようやく丸3年が経過しようとしているvProの普及が本格化するのは、これからの話ということにはなりそうだ。

運用管理ツールがvPro自体の進化に迅速に追従することも求められるが、実際には遠隔での電源オンオフといったごく基本的な機能から使い始める例が大半だという話もあり、その点は現時点でも問題はないようだ。それだけでも省電力効果や運用管理負担の軽減といったメリットは享受できるし、vProを選ぶことに伴う追加負担が大きくないのであれば、敢えて非vProのPCを選ぶ理由もないだろう。

実際に導入した企業では全社規模での一括導入が少なくないようだが、もちろんリースアップのタイミングで段階的にvPro機に交換していき、数年後に運用管理体制を切り替える計画で導入を進めている企業もあるそうだ。この場合も、vPro機を導入したことに伴うデメリットは基本的には存在しないと考えられる。現在の経済環境下では大規模なITシステムの刷新は実行しにくいかもしれないが、vProの採用を検討する価値はありそうだ。